学長からのメッセージ

総合研究大学院大学(以下、総研大)は、学術研究の新しい流れに先導的に対応できる、視野の広い創造性豊かな研究者を養成することを目的として昭和63年10月に設立され、翌年の平成元年4月に第一期生を受入れました。それ以来21年間に、1300名をこえる博士課程修了生を国内外の大学、研究機関、産業界などに送り出しました。また、論文博士は200名近くに達しています。この間に、日本の社会は大きく変貌を遂げ、高等教育の在り方も国立大学の法人化を契機として大きな変革期に入りました。法人化とともに総研大で行った改革には、従来の博士後期課程に5年一貫制博士課程を併設したことがあります。この併設の趣旨は学生受入れ制度の弾力化にありましたが、教員の大学院教育に対する意識に大きな影響を及ぼし、教育の質の向上につながる結果となりました。
総研大は、大学共同利用機関が有する優れた研究環境と人材を活用してトップクラスの研究者を養成する、という世界でも類例のないコンセプトのもとに設立されました。大学共同利用機関とは、国内外の大学研究者が共同で利用できる研究機関のことであり、我が国に固有の仕組みであります。総研大は、大学共同利用機関を基盤(総研大では基盤機関と呼称)として発足した学部をもたない大学院だけの大学(大学院大学)ですが、この組織的な特色はそのまま教育研究の特色となっています。もっとも顕著な点は、大学院教育を各基盤機関の研究の現場において直接実施していることです。基盤機関では国際性豊かな専門的研究が行われていますが、この事実が本学の教育目標である「高い専門性」と「国際的通用性」の養成に対応しています。
本学の基盤機関に置かれた専攻は、学術的にも地理的にも分散しています。そのため、専門分野を超えた密接な連係協力のもとに、大学としての一体性を確立することと、「広い視野」を持つ人材を養成することが創設以来の大きな目標です。この目標に向かって、大学本部のある葉山キャンパスでは、専攻の自立性を尊重しつつ「分散」の総合化を図る教育研究活動を展開してきました。今後は、専攻間の教職員や学生同士あるいは修了生間でさまざまな学術交流ネットワークを構築し、一層密接な連係協力を推進する所存です。
本学に限らず各大学が行っている高等教育は、21世紀の社会を支える柱です。この公共性のために、国民は大学を支援しその成果を期待しています。とくに、科学と技術に基づく現代文明が大きな転換期にあるとき、社会に対する大学の果たすべき役割が軽減されることはないでしょう。こうした時代にあって、総研大はその建学の精神に則り、優れた教育研究活動を展開し社会に貢献できるように努めます。関係各位には、総研大の一層の発展のために引き続きご理解とご協力を賜りますように、ここに改めてお願い申し上げます。
平成22年4月1日
総合研究大学院大学長
高畑尚之


