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「人と鹿が暮らすフィールドで」

文化科学研究科地域文化学専攻 東城義則

国立民族学博物館(民博)を基盤機関とする地域文化学専攻の博士後期課程3年の東城義則さんにインタビューを行いました。東城さんは奈良や北海道を主なフィールドとして、人と野生動物の関係を人類学の立場から研究をされています。フィールドワークを通じて様々な経験をされてきた東城さんに、研究生活やそれらの経験で得た考え方についてお話を伺いました。

Q:どういう経緯で地域文化学専攻を知ったのですか?また、総研大に進学した理由は何ですか?

A:私は大学院修士課程に在籍していたとき、この先どのように研究を進めていくのか、そして所属先をどうするのか悩んでいました。その当時、私は自分の研究テーマに対する絞り込みが甘く、この先どのように研究を進めていけばよいか展望をつかめていませんでした。また、当時は歴史学の研究室に所属していましたが、人類学と歴史学の両方の研究方法を用いながら研究を進めていたため、所属する研究室を変えることも考えていました。そんなとき、ある学会で知り合った先輩の紹介で、現在の指導教員を知りました。このことが地域文化学専攻を知ったきっかけですね。その後、指導教員と直接会って話をして、私が当時考えていた研究内容を受け入れてくれたことから、総研大への進学を決めました。

Q:総研大や民博での生活は、以前所属していた大学での生活とどういった違いがありますか?

A:総研大や民博では、人との出会いの場を用意してくれることと、学生によるプロジェクトの企画を支援・助成してくれることが、以前いた大学と異なっています。 総研大では学生セミナーや学術交流フォーラム、総研大レクチャーなどで、バラエティに富んだ講義やワークショップが開催されています。また民博では国際シンポジウムをはじめ、多くの共同研究会が開催されています。これらの場を通じて、さまざまな研究分野の方と出会い意見交換を行うことができます。研究室や学会では接することのない異分野の研究者・大学院生と交流できることは、研究者として多角的な視点を養うことにつながっています。

自らが企画するワークショップのフィールドワークで、野生動物の捕獲方法を説明する東城さん(写真中央)
自らが企画するワークショップのフィールドワークで、野生動物の捕獲方法を説明する東城さん(写真中央)

また、総研大では学生がプロジェクトを企画して大学側に事業申請を行い、審査に通ると、申請したプロジェクトに対して助成をしてもらえる制度があります。私はこの制度を利用して、産学・地域連携による事業「産学・地域連携による交流型環境教育プロジェクト:「奈良のシカ」の保護活動から学ぶ人とシカとの共生」を申請して採択されました。このプロジェクトでは、地域の方々と協働でワークショップとセミナーを開催します。その中で、人と野生動物との関係を扱った人類学、民俗学、社会学や環境学における研究成果を紹介し、「奈良のシカ」の保護活動の現場で生じている問題についてより多くの方々に知ってもらい、解決策について共に考えてもらうことを目指しています。現在はその準備作業に奔走しています。
総研大の研究環境にはこうした特徴がある一方で、一般的な大学院と比べると学生間の関係が希薄になりやすいという面もあります。基盤機関にいると、普段は基盤機関の先生方や職員の方と接する機会が多いため、職場のなかでコミュニケーションをするという雰囲気になります。そのため、以前に比べフォーマルなコミュニケーションを行う機会が増えました。一方で、学生同士で本気で自分の意見をぶつけ合う機会が以前の所属先に比べて少なくなったと思います。もちろん、学生同士の仲が悪いということはなく、学生同士で飲みに行ったりすることもあるので、その点については心配する必要はないです。

Q:どんな研究をされていますか?

A:人類学の立場から、人と野生動物が共生するために必要となる動物救護や狩猟の技法について探っています。

自身の研究内容について説明をする東城さん
自身の研究内容について説明をする東城さん

私は幼い頃、動物と接するのが苦手でした。家族旅行で初めて奈良公園に行ったとき、自分よりも大きなシカが、鹿せんべいを持つ自分の方に近づいてくることに恐怖心をいだきました。その体験以降、シカだけではなく他の動物も苦手になりました。しかし、そのときの経験が後々になって私の研究生活に影響を与えることになりました。大学に入り歴史学を専攻していたとき、貴族の日記や社寺の古文書を通してシカが平安時代から長期にわたって奈良に棲んでいることを学びました。そのとき奈良公園における原体験のことや、自分が動物を苦手としていたこともあり、どのようにして人は動物と折り合いをつけ、同じ空間で生活するようになったのかに興味を持つようになりました。学部生のときはニワトリについて、修士課程のときは奈良公園のシカについて、それぞれの動物と人との関係の歴史について研究を行ってきました。
現在は従来までの奈良に加え、北海道でも研究を行っています。奈良ではシカの保護団体の方々、北海道では狩猟者の方々にお世話になりながら研究を進めています。私の研究では、主に動物と接する際に必要となる道具の扱い方や捕獲方法を扱います。考察に必要なデータを収集するために、実際に保護活動の現場や狩猟の現場に同行させてもらい現場の作業を観察します。さらにそれらの作業を手伝うことで、作業内容を覚えていきます(このような、調査先に滞在しながらさまざまな活動に参加して、その場で生じたことを観察する研究手法を参与観察といいます)。後日、現場ではわからなかったことについてお話をうかがいに行きます。また、これらの調査によって得られた記録に加え、公文書や雑誌記事などの内容を参照しながら、次のような視点から分析を行います。野生動物と接するにあたり、人はこれまでの作業経験によって身につけてきた技能(skill)を、どのような道具を用いながら発揮し、作業に従事するもの同士で連携して救護や捕獲を行うのか。また、人びとが時間をかけて身につけてきた技能と、その場で用いた動物を救護したり捕獲したりする技法(technique)は、どのようにして他の人々へと継承されていくのか。さらには、野生動物と接するための技能や技法が地域社会においてどのように認識されていて、現代社会のなかでどのように扱われているのかといった視点です。これらの視点から人と野生動物との関係を探ることで、さまざまな環境のもとで野生動物に対応するための知見の開拓、野生動物保護管理策への提言、そして人文科学の立場からの人と動物との関係を考えるための思想や洞察を得ることができればと考えています。

Q:将来はどのような職業につきたいと考えていますか?

A:学位取得後は、研究職や教育支援などの職業を含め、自分のこれまでの経験で培ってきた長所を生かせる職業に就きたいと思っています。総研大のさまざまな事業に参加するなかで、私はワークショップのファシリテーターやグループワークのオーガナイザーを経験してきました。とくに、人を募ったり、集まった人たちを取りまとめたりすることについて、この数年間で勉強させてもらいました。このため、地域の任意団体やNPO団体などでその経験を生かしたいとも思っています。また、中学校と高校の教員免許を持っているので、教師として働くことも選択肢の一つとして考えています。

Q:博士課程を目指す後輩へのアドバイスをお願いします。

A:大きなものでも小さなものでもいいので、失敗をして学んでください。私自身、フィールドで多くの失敗をしてきました。例えば調査先の方を不快にさせることをしたにも関わらず、そのことが不快であることを実際に話してもらうまで、全く気づかないということがありました。その時はいたたまれなくなり、失敗のことがしばらく頭から離れませんでした。しかし、こうした失敗とその後の反省が自分を成長させるきっかけにもなります。
また私たちの研究生活は、調査や実験、論文を書くなどの狭い意味での研究活動だけで回っているわけではありません。他にも、予算の管理についての事務作業や、組織を作ったり、それを統括したりすることも、今後の研究生活で必要になってくると思います。また、将来、研究職ではない道に進むことになったとき、日々の研究以外のことを経験しているかどうかは重要な点になると思います。
日々の研究活動以外にもさまざまなことに挑戦して、失敗して学んでください。失敗した際の反省と学び、そして次の挑戦に向けた1つ1つの取り組みが、これからの自分のキャリアを考え、将来を形作るための経験となるでしょう。

-インタビューを終えて-

北海道でフィールドワーク中に観察されたエゾシカ
北海道でフィールドワーク中に観察されたエゾシカ

このインタビューは、東城さんがオーガナイズする学生企画事業のワークショップに私が参加したときに行われたものです。このワークショップのなかで、私は彼の人を集める能力やそれを取りまとめる能力を目の当たりにしました。様々なことに挑戦し、失敗を乗り越えた結果、現在の彼の能力があると感じました。 総研大では、東城さんのような意欲のある学生に対して、研究面のみならず経済面でも充実した支援を受けることができます。言い換えれば、挑戦し、失敗する機会を与えてくれると言ってもいいかもしれません。このような環境で大学院生活を過ごしてみたいと思う人は、ぜひ、進学先に総研大を選んでください。

東城義則

東城義則

所属: 総合研究大学院大学 文化科学研究科地域文化学専攻 
専門:人類学・民俗学

平成19年3月東洋大学文学部史学科卒業、平成22年3月京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻修了、同年4月より総合研究大学院大学文化科学研究科地域文化学専攻博士後期課程。平成25年4月より日本学術振興会特別研究員(DC2)。

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