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2016.12.02
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【プレスリリース】『サンゴは、これまで知られている生物の中で最大数の蛍光タンパク質遺伝子をもつ』

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プレスリリース概要

『サンゴは、これまで知られている生物の中で
最大数の蛍光タンパク質遺伝子をもつ』

 

【研究概要】

 本研究ではサンゴのDNAとタンパク質の解析と蛍光の測定を行い、サンゴがどのような蛍光タンパク質遺伝子をもち、それらがどのように進化してきたかを初めて明らかにしました。夜の海でサンゴに青いライトを当てると、サンゴが光って見えます。この光は、サンゴの中にある蛍光タンパク質(FP: fluorescent protein)が作っています。この蛍光タンパク質がサンゴの中でどのような役割を担っているのかは、まだ明らかにされていません。それを明らかにする基礎として、今回は蛍光タンパク質の遺伝子の数と種類、それらの機能を調べました。その結果、ミドリイシ属のサンゴは、蛍光タンパク質をもつ生物の中でも最も多くの数の蛍光タンパク質遺伝子を持つことがわかり、シアン、緑、赤の蛍光と青色素の機能があることがわかりました。このたくさんの遺伝子は、ミドリイシ属が進化してきた中で維持されており、このことから蛍光タンパク質がサンゴにとって重要な役割を持っていると予想されます。この研究内容はGenome Biology and Evolutionに発表されます。

 

【詳細研究内容】

 サンゴ礁をつくるサンゴである、イシサンゴ目のサンゴ(以下サンゴ)は、蛍光タンパク質をもっています
(図1)。蛍光タンパク質は、下村 脩博士がオワンクラゲで発見して以来、バイオイメージングマーカーとしてよく研究されてきました。サンゴは緑、橙、赤と放射する蛍光の波長の異なる蛍光タンパク質を持っています。蛍光タンパク質は、光を吸収して蛍光を放射します。光を吸収するだけで蛍光を放射しないタンパク質もあり、これは色素タンパク質と呼ばれます。この色素タンパク質(図1c)も、遺伝子配列の類似性から蛍光タンパク質遺伝子の仲間(遺伝子族)として分類されます。サンゴの体内に大量の蛍光タンパク質が存在することから、光の吸収による生体の保護、蛍光による共生藻の光合成の補助、過酸化物の除去など蛍光タンパク質の重要性が推定されていました。しかし、蛍光タンパク質がサンゴの中で本当はどのような役割を担っているのか、実はまだ明らかにされていません。役割解明を困難にしている理由の一つが、遺伝子基盤が分からないことでした。そこで本研究では、太平洋で一般的なミドリイシ属のサンゴである、コユビミドリイシを用いて、蛍光タンパク質の遺伝子基盤の解明を目的に研究を行ないました。

図1:研究に用いたサンゴの蛍光と色素

図1:研究に用いたサンゴの蛍光と色素(クレジット:総合研究大学院大学)

 はじめに次世代シークエンス法と分子生物学手法を用いて、サンゴで発現している全ての蛍光タンパク質遺伝子の配列を調べました。この遺伝子配列から、タンパク質をつくることができます。作ったタンパク質の蛍光や光の吸収を測定することで、そのタンパク質がどのような色の蛍光をもつのか調べることができます。その結果、サンゴの蛍光タンパク質遺伝子は、シアン?緑色(短-中波長の蛍光)、緑?赤色(中-長波長の蛍光)、青色の色素(色素タンパク質)の3つのグループ(図2)に分かれました。そして遺伝子の数に注目すると、これまで知られている生物で最も数が多い(最大35)非常に大きな遺伝子族を形成していました。また、この多重遺伝子族はミドリイシ属の進化の過程で維持されていました。たくさんの遺伝子が失われることなく維持されていることから、蛍光タンパク質はサンゴで重要な役割を担うと推測されます。

図2:蛍光タンパク質遺伝子族とその機能

図2:蛍光タンパク質遺伝子族とその機能(クレジット:総合研究大学院大学)

 今回、蛍光タンパク質の遺伝子基盤が明らかになったことで、蛍光タンパク質の役割の解明に一歩近づきました。蛍光タンパク質の役割は分かっていませんが、ストレスによってサンゴの蛍光が変化することが報告されています。そのため蛍光は、サンゴの健康状態をチェックするマーカーとして利用できる可能性があると期待されています。本研究では沖縄をはじめ太平洋で一般的なミドリイシ属のサンゴを用いているので、この研究はサンゴの保全のためにも、その基盤を築くことができる重要な研究になると期待しています。

【論文全著者】

仮屋園 志帆(総合研究大学院大学 先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 博士課程4年)

五條堀 淳(総合研究大学院大学 先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 講師)

颯田 葉子(総合研究大学院大学 先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 教授)

酒井 一彦(琉球大学 熱帯生物圏研究センターサンゴ礁生物科学部門 教授)

寺井 洋平(総合研究大学院大学 先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 助教)

【論文原題】

Acropora digitifera encodes the largest known family of fluorescent proteins that has persisted during the evolution of Acropora species

【発表雑誌名】

Genome Biology and Evolution、Oxford University Press、8号、2016年12月2日出版
およびオンライン掲載

○研究に関するお問い合わせ先

発表者:寺井 洋平(てらい ようへい)

総合研究大学院大学 先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 助教

電子メール: terai_yohei(at)soken.ac.jp ※(at)は@に変換してください。

https://www.soken.ac.jp/news/30232/

Posted On 2016.12.02 By 広報社会連携室
〒240-0193 神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村)

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