広島大学観山正見特任教授と総研大学長 岡田泰伸、理事 永山國昭の対談

大学概要

対談 観山正見 広島大学特任教授 1

異分野との融合で新しいパラダイムを
~アストロバイオロジーの目指す方向

 

対談者

  • 観山  正見  広島大学特任教授       略歴
  • 岡田  泰伸  総研大学長          略歴
  • 眞山  聡   総研大広報社会連携室長    

 

観山 正見


広島大学学長室特任教授
神戸大学大学院理学研究科惑星科学研究センターセンター長・特命教授
前大学共同利用法人自然科学研究機構理事
前国立天文台長

経歴

1975年 京大理学部物理学科卒業。

1980年 京大大学院理学研究科博士課程修了。

1983年 京大理学部助手。

1989年 国立天文台理論天文学研究系助教授。

1992年 国立天文台教授。

1996年 国立天文台企画調整主幹。

2005年 国立天文台副台長・理論研究部教授。

2006年 国立天文台台長。

2012年 広島大学学長室特任教授。

2015年 神戸大学大学院理学研究科惑星科学研究センターセンター長・特命教授
(広島大学とクロスアポイントメント)

岡田泰伸

1974年 京都大学医学部 助手

1981年 京都大学医学部 講師

1992年 岡崎国立共同研究機構生理学研究所 教授

1992年 総合研究大学院大学生命科学研究科 教授(併任)

1998年 総合研究大学院大学 生命科学研究科長

2004年 自然科学研究機構生理学研究所 教授

2004年 自然科学研究機構生理学研究所 副所長

2007年 自然科学研究機構 副機構長(兼)生理学研究所長

2007年 総合研究大学院大学生命科学研究科 生理科学専攻長

2010年 自然科学研究機構 理事(兼)生理学研究所長

2011年 自然科学研究機構 副機構長

2014年 国立大学法人総合研究大学院大学長

眞山 本日、司会を務めさせていただきます総研大の眞山です。よろしくお願い致します。
観山先生は国立天文台で、星や惑星形成のご研究など、天文学の理論的研究を長らく続けられ、国立天文台台長ご就任後、自然科学研究機構理事を務められ、現在は広島大学の特任教授に就かれています。

中学生時代に相対性理論に心酔 憧れの理論物理学を通じて天文研究の道へ

岡田 本題の前ですが、先生のご実家はお寺で、先生ご自身も僧侶の資格をお持ちだとお聞きしています。そういう中で、なぜ天文の研究者を目指されたのか、その辺のいきさつをぜひお伺いできればと思います。

観山 よく聞かれます。私の祖父は、インド哲学について東大で研究活動を行い、父も中国哲学の研究に携わりましたので、仏教に関係する哲学や倫理学など、宗教関係の本が家の書庫に山のようにある環境で私は育ちました。
小さいころからの父母の教育効果か、ゆくゆくはお寺を継ぐと子ども心に覚悟していましたが、やはり中学校、高校ぐらいになると、決められた状況に対しての反発というか、反抗期を迎えたのです。中学生のときには理系の啓蒙書をたくさん読みました。『ガモフ全集』やアインシュタインの相対性理論関連書にも数多く親しみました。

岡田 あの頃は、たくさんの書籍がありましたね。

観山 そうですね。広島大学附属中学校に通っているころ、広大のオープンキャンパス開催中に理学部を訪ねました。実験活動などを見ているうちに、以前啓蒙書で読んだスピンの話なども出てきて、物理学への憧れを大きく胸に抱き始め、研究者になりたいと思うようになったのです。
京都大学に進むと、紙と鉛筆だけで自然界を表現できる理論物理の可能性に大きな期待を持ちました。ただ当時、京大の物理分野の大学院試験は非常に難しかったのです。今では、ちょっと考えられないような20倍ぐらいの競争率でした。湯川秀樹先生に啓発されたので、もともとは素粒子の分野に行きたい気持ちがありましたが、残念ながら、数名しか採らなかったので、宇宙物理学、天体物理学分野である林忠四郎先生の下に行きました。
京大の物理は実験と理論があり、私は理論の方に入りましたので、物理学理論で宇宙を勉強するという感じで、天文学については、最初はあまり興味を持たなかったのです。しかし、大きな世界の中で物理学を展開したいという観点から、宇宙物理学・天文学の研究を進め、ご縁があり、助教授として天文台に採用していただきました。理論研究ですから、観測するようなことはあまりなく、コンピューターを使うようなことが多い研究活動でした。
実家のお寺は田舎にあって、星が満天に満ちている環境です。「先生の家は、星がよく見えるので、小さいころから天文学者になりたかったのですか」と、よく聞かれますが、そうではなく、寄り道をしながら天文に移りました。

現代天文学の宇宙理論と仏教が説く世界観には相通ずる部分がある

観山 最近私は、宇宙の構造は、実は宗教の中にもあって、結構天文学と似通っていると思うようになりました。例えば、仏教の曼荼羅(まんだら)というのは、さまざまな仏様の世界を示しています。さらに、仏教が説くものの1つに、三千大千世界というのがあります。世界には、宇宙に例えると太陽系のような須弥山(しゅみせん)世界があり、それが千個集まって小千世界をつくる。その小千世界がまた千個集まって中千世界になり、さらに中千世界が千個集まれば大千世界になる。この3層構造全体を三千大千世界と言う広大な宇宙観です。われわれの太陽系を一世界とすると、その上の階層に銀河があり、そしてその上に銀河団があって大宇宙を構成します。同じく三層構造をしています。

岡田 すごいですね。見事に一緒です。

観山 よく似ていますね。もう1つ、とても面白いのは、キリスト教やイスラム教には絶対神がいて、我々の場所が宇宙の中心で、宇宙は自分たちの周りを回っているという感覚がありますが、仏教では、曼荼羅や三千大千世界のように、ほかの世界があることを認めているわけです。これは仏教の、ある種の平等観みたいなもので、つまり、種々の仏が存在し、同様にそれに伴う世界があるという宇宙観ですが、我々を特別視しないという現代の宇宙原理そのものなのです。仮に私が素粒子の研究分野に行っていたら、宇宙を題材に法話をすることはできなかったでしょう。そういう意味で、天文と仏教は通じるところが多く、今は感謝しています。

岡田 なるほど。いきさつはよく分かりました。最初に仏教との関連で研究者になられたわけではなかったということですね。

観山 そうですね。学問の理解が進むにつれ、改めて仏教の奥深さを感じます。ほかの世界も認める考え方の本質には農耕民族特有のイメージがあり、やはり狩猟民族とは違うのかなとも思います。

岡田 そこから、ほかの宇宙にも生物がいるのだろうかという話になっていくわけですね。

観山 そうですね。

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