Yasu通信|国立大学法人 総合研究大学院大学

Yasu通信

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『Yasu通信』は、岡田泰伸学長を中心に、より良い大学運営の改善、教育研究の拡充のため強いリーダーシップを発揮して取り組む大学改革の状況や、将来の研究を担う学生の皆さんへの熱いメッセージを、わかりやすく発信いたします。

Yasu通信 第12回(2017年2月27日)

学長任期を終えるにあたって

月日の過ぎるのは速いもので、学長任期の3年があっという間に終わろうとしている。在学生や修了生の皆さんが誇れる大学にと、私なりに必死で改革に取り組んできた。その結果、昨年に行われた平成27事業年度及び第2期中期目標期間業務実績に関する国立大学法人評価委員会の評価において4項目すべてについて「中期計画の達成に向けて順調に進んでいる」との評価を得ることができた。また平成29年度概算要求機能強化促進費評価の基となった昨年度からはじまった第3期の機能強化の初年度取組の評価結果も、重点支援枠➁(注1参照)の15大学の内の第3位の評価を得、来年度予算の増額を得ることにも成功した。もっと大きな改革をと意気込んできたが、人的環境に種々問題があり、不充分なままとなったのは残念だが、改革の方向性は明確に示すことはできたと考えている。あとは、次の執行部の取組に期待したい。

ただ、葉山の自然環境は抜群で、湘南国際村の木々や花々、そして海越しの富士山を観ながら、山本剛のピアノジャズを聴きつつの通勤・運転は最高であった。

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 写真1)

私にとってこの3年間は、多くの国立大学の現在の悲惨な状況を眼の当たりにするという機会ともなった。法人化後、国は12年間にわたって毎年1%ずつ運営費交付金を削減するという壮大な「実験」を行ったのだ。それによってもたらされた数々の悪影響をここで枚挙することは控えるが、皆さんの将来にとって最も切実な一例は、若手研究者・教員ポストの変化である。国立大学にはおよそ17,000人の若手研究者・教員が働いているが、この10年間でその内の約4,000のポストが任期なしから任期ありに替ってしまった。即ち、2007年には63%強が任期なしのポストであったのが、2016年にはそれは36%弱に減ってしまい、その比は逆転してしまうという結果をもたらした。この「実験」結果は、すべて明らかにされ、充分に解析された上で、今後の学術・科学技術・高等教育行政に生かされなければならない。先日、学長対談(注2:写真1)をさせていただいたノーベル生理学・医学賞受賞者の大隅良典先生(本学名誉教授)も、「この閉塞した状況は何とか打破しないといけない」と述べられ、私達シニアの責任としても改善に全力を尽くそうと、静かな語り口ながら強い思いを表明された。

修了後の身分の不安定さは、皆さんにはとても気掛かりなことでしょうが、負けることなくがんばって初志を貫いてほしい。実は私も大隅先生も、先の見通しもなく研究者の道を取りはじめた。事実、私自身学部卒業後4年間は既に家族を持ちながら何の奨学金もない無給研究者として過ごした。でもあの頃は、何となく「がんばっていれば何とかなるだろう」という雰囲気が社会全体にあったので、余り気にすることもなかったのだと思う。その点は、今と大違いなのだろう。皆さんが一生懸命がんばっていれば必ず報われるという状況に変えなければならない。私はこの3月末で葉山を去って違った立場に立つことにはなるが、そのように私なりの努力を今後も続けたいと思っている。

最後に、教員の方々にも、この場を借りてお願いをしておきたい。総研大生は何らかの形で皆さん方の後継者となり、将来の学術と国を支えることになる「金の卵」です。皆さんご自身の未来のためにも大事に育てていただきたい。そして、総研大のブランド力を高める努力にも心掛けていただきたい。私個人は、時間をかけてでも総研大と大学共同利用機関法人は一体となるような方向をとることが、真に優れた教育研究環境を得ていく上でベストであると考えている。

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 写真2)

最後の最後に、在学生の皆さんに贈る言葉をと考えて来たが、先日の岡崎での大隅先生のご講演(注3:写真2)の最後のスライドで、大隅先生が「私が思うこと、若者へのメッセージ」と題して挙げられた次の8点に勝る言葉は無く、これらに尽きると感じ入ったので、それを(許可を得て)引用させていただくこととする:


  1. 1. 長い人類の歴史の中で考えよう。
  2. 2. 自分の興味、抱いた疑問を大切にしよう。
  3. 3. 自分の小さな発見を大事にしよう。論文やあふれる情報からではなく、自然、現象から出発しよう。
  4. 4. 短期的だけでない、課題を見つけよう。
  5. 5. はやりを追うことはやめよう、競争だけが科学の原動力ではない。
  6. 6. 人と違うことを恐れずに、自分の道を見極めよう。
  7. 7. “役に立つ”とは何かを考えよう。
  8. 8. 自分の研究の理解者(ファン)を、できるだけ周りに作ろう。

では、またどこかで元気に活躍している皆さんにお目にかかるのを楽しみに・・・。

注1)昨年度より、国立大学への予算配分の1区分として「国立大学法人機能強化促進費」が創設され、各大学はそれぞれ、①地域貢献推進、②特色分野推進、③卓越成果創出の主取組を掲げる3つの重点支援枠のいずれかに入り、大学毎の機能強化構想への評価を基に、予算配分に差がつけられるという仕組みとなった。

注2)2017年2月6日に東工大すずかけ台キャンパスで行われた大隅先生との対談。その詳しい内容記事は、近日中に総研大ホームページおよび国大協ホームページで掲載される予定。

注3)2017年2月11日に岡崎市民会館あおいホールで行われた「大隅良典基礎生物学研究所名誉教授ノーベル生理学・医学賞受賞記念講演」(自然科学研究機構・岡崎市・岡崎市教育委員会・総合研究大学院大学 主催)。

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