私事で恐縮だが、私たち夫婦は、先日結婚42周年を迎えた。この間、世の中はずいぶん変わったが、世界の変化に比べて日本がもっとも変わっていないことの一つが、女性の地位ではないかと思う。我が家では、初めから家事は半々の分担であったが、世の夫の多くは、いまだに家事はあまり関わらないらしい。1986年には男女雇用機会均等法が、99年には男女共同参画社会基本法が施行され、あらゆることにおいて、男女差別をなくす社会に向かったはずである。
しかし日本では、物事を決める立場にある地位の女性の数が圧倒的に少ない。もちろん、日本でも良くなってはいるが、世界の変化はそんなものではない。日本は全くのガラパゴスである。データで示そう。
世界経済フォーラムが毎年出しているデータに男女格差指数というのがある。これは、政治、経済、教育、健康の面で男女の格差を指数化したもので、1に近いほど男女平等である。2018年の日本の総合評価は0.662で、149カ国中110位であった。教育と健康では、0.99と0.98なので、ほぼ平等なのだが、今やこの二つの項目は各国とも1に近いのである。
問題は政治と経済の分野で、日本の政治分野の値は0.081で125位、経済分野は0.595で117位である。政治分野の評価には、過去50年間の女性首相の数、女性閣僚の割合、国会議員における女性割合が含まれる。
そこで日本の状況を調べてみたら、国会議員の女性割合は19年で13.8%、191カ国中144位である。サウジアラビアの19.9%よりも低い。地方政治はもっとひどくて、18年の都道府県知事の女性割合は6.4%、都道府県議会議員は10.0%、市区町村長は1.8%、市区町村議会議員では13.4%であった。目を覆う数字ではないか。
企業、公務員などにおける女性管理職の割合というデータもある。10年の日本は10.56%だった。それが17年には13.9%になったので、確かに増えてはいる。しかし、欧米先進国は、10年時点で既に30%台であり、40%に近づいている国もある。他の国々の動向も見ると、先進国では10年代に女性管理職が30~40%という数値を達成し、他の国々も多くがそのような道を歩んだが、日本は遅々として進まず、というのが現状なのである。
経済分野に限ると、日本の上場企業における女性役員の割合は、12年の1.6%から18年の4.1%へと増えてはいる。しかし、欧米諸国は15年時点で軒並み20~30%なので、比べものにならない。帝国データバンクが日本の9979社を分析した調査によると、18年時点で、役員に一人も女性がいない会社の割合は59%。管理職に一人も女性がいない会社は48.4%である。
給与面では、フルタイムで働く人の給与の中央値を男女で比較すると、00年時点で日本の女性の給与は男性に比べて33.9%低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でワースト2だった。16年には、24.6%に縮まったが、やはり悪い方から3番目である。欧米諸国は00年時点で10~20%台、15年でおよそ10%台。日本は20年以上遅れている。
ちなみに、86ある国立大学法人のうちの女性学長は、今年度は私を含めて4人、過去最高の4.65%となった。アメリカの大学全体では30%、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによる世界のトップ200大学でも17%が女性学長なのだ。
日本は、社会のあらゆる面において、物事を決める立場にいる女性が圧倒的に少ない。女性の地位向上に関する問題は議論されるのだが、それらのほとんどは子育て支援である。つまり、女性は、「子どもを産み育てやすい社会」を作るという観点からしか見られていないのだ。社会の動向を決める決断をする女性を増やそうとは、まったく考えていないとしか思えない。
多様性が大事だと言いながら、役員、管理職、学長、議員、都道府県知事など、重要な意思決定にかかわる人々はほとんど男性(しかも高齢)、というのでは、多様性の意味はどこにあるのか?考え方、ものの見方、生き方が異なる多様な人々によって運営される社会を目指すべきである。まずは、女性管理職の割合を3割に。