本研究では、昭和基地内のIGS (International GNSS Service:国際GNSS事業)点SYOG、リュツォ・ホルム湾沿岸露岩域(ラングホブデ、スカルブスネス、パッダ、ルンドボークスヘッタ)で実施されたGNSS 観測データの解析を行いました(図1)
図1. 本研究の対象地域とリュツォ・ホルム湾沿岸露岩GNSS観測点の位置。
リュツォ・ホルム湾は日本の南極観測拠点・昭和基地のあるオングル諸島を内包する南北にひろがる湾で、過去複数回のキャンペーン観測の実施、また定常観測点の設置が進められてきました。これらの点で得られた観測データをPPP(Precise Point Positioning, 精密単独測位)手法を用いて解析することで、各点で水平変動・上下変動の時間変化を推定しました(図2)。
本研究ではリュツォ・ホルム湾沿岸で実施されたGNSS 観測の解析を行うことで、観測報告の少ない東南極における GIA による地殻変動を明らかにしました。これにより、地質学的研究など関連する他分野の研究と連携することで、過去の南極氷床融解史や地球内部構造の理解がより進むと考えられます。また、今回のGNSS 観測の結果では、ラングホブデの観測点はやや異なる傾向を示しました。これは、よりローカルな荷重の変動による影響や、観測期間の長さが不十分であることによる推定誤差の影響などが要因として考えられます。これらの問題を解決し正確な議論を進めるためには、より長期にわたって今後も観測を継続し、観測点を広範囲に拡げていくことが非常に重要となります。