2022.03.09

第63次南極地域観測隊(越冬隊)の隊員からメッセージが届きました③

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こんにちは。第63次南極地域観測隊に参加中の事務局職員の馬場です。
今回は、私が夏期オペレーション中に行った昭和基地における仕事の一端をご紹介します。また、1月後半に参加した野外観測支援の様子と、62次隊と63次隊との越冬交代前後の様子についてもご紹介します。

夏期間中に昭和基地から離れた野外で観測活動を行う隊員の多くは、まず「しらせ」から昭和基地へ入り、基地を準備拠点として調査目的地へとでかけていきます。基地から目的地までは「しらせ」搭載ヘリコプターで人員や観測機材などを運搬しますが、通称「ヘリオペ」と呼ばれるヘリコプターの運行スケジュールの詳細は、運行の前日に「しらせ」から昭和基地の夏期宿舎にいる庶務担当の私宛に連絡がきます。私はそれを受け取り次第、フライトプランに合わせてヘリポートまでの人員の送迎や観測機材などの運搬に使用する車両の事前調整を行い、当日はヘリポートでの人員確認や荷物の積み込み、荷下ろしなども行います。ヘリオペは、天候などの影響で当初の予定どおりに行くとは限らず、日々変更されていくため、その対応には苦労もありました。 その一方、少ないながら、昭和基地には入らず「しらせ」から直接観測地点に赴き、キャンプ生活を続けながら観測を行うグループもあります。昭和基地から約20km離れたラングホブデ氷河で熱水掘削という方法で氷河に穴を掘って観測を行うチームもその一つで、1月19日から21日まで、他の設営系の隊員2名と一緒に観測の支援に行きました。 ラングホブデ氷河は、岩盤がむき出しで茶色い景色の夏期間の昭和基地とは異なり、これぞ南極という景色が広がる白銀の世界でした。氷河の上で、氷の厚さを測るアイスレーダーを背負って歩き回りましたが、庶務担当隊員であっても、このように学術研究の最先端のお手伝いができるというのも南極観測隊ならではの体験です。氷河上での経験は、夏期間のなかでも一番感慨深いものとなりました。

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(アイスレーダーを背負ってキャンプ地に戻るところ。2022年1月20日)

氷河での観測支援から戻って2日目の1月23日、昭和基地沖に接岸していた「しらせ」は、昭和基地から離れた海域で海洋観測を行うため、越冬交代に先立ち離岸していきました。

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(昭和基地沖を離岸し、反転する「しらせ」。2022年1月23日)

そして、2月1日の朝、昭和基地の19広場において越冬交代式を執り行い、63次越冬隊が62次越冬隊から昭和基地の管理運営を引き継ぎました。式の終了後、阿保越冬隊長をはじめとする62次越冬隊員と63次夏隊員がヘリコプターで「しらせ」に戻るのを昭和基地のヘリポートから見送りました。また、昨年12月に昭和基地入りして以来過ごしてきた夏期隊員宿舎から、今後1年間の越冬生活の拠点となる居住棟へと引っ越しました。

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(越冬交代式後、前任(62次隊)の金城隊員(琉球大学)(右)と。2022年2月1日)

2月8日には、引き継ぎ等のため昭和基地に残留していた62次越冬隊員と63次夏隊員もヘリコプターの最終便で「しらせ」に戻り、完全に63次越冬隊員および同行者32名だけの生活がいよいよスタートしました。夏期間中に苦楽を共にした夏隊員とは来年3月に我々が帰国するまでの間しばしのお別れとなります。

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(最終便見送りの様子。2022年2月8日)

2月10日には、4次越冬隊で遭難された故福島紳隊員を悼むために昭和基地内に建てられた福島ケルンの前で慰霊祭を執り行い、故人のご冥福をお祈りするとともに、安全を祈願し、64次隊に引き継ぐまでの1年間昭和基地を無事に維持管理していけるよう決意を新たにしました。

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(福島ケルン前での63次越冬隊集合写真。2022年2月10日)

現在、63次越冬隊は、本格的な冬が到来するのを前に、南極用低温燃料(南極経由)を入れたリキッドコンテナの作成・集積や、越冬明けに持ち帰る予定の破棄物等を入れたコンテナの整理、基地内の整地など越冬に向けた準備を着々と行っています。

掲載協力:国立極地研究所

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