2024.02.07

コケ植物がストレス環境下で蓄積する色素の分析手法の習得

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2023

新井駿一

極域科学

ストレス処理から分析までの流れ

1)南極大陸のコケ群落(撮影:伊村智)、2)紫外線蛍光灯の下で培養して紫外線ストレスを受けているコケ植物、3)そのコケ植物から抽出した色素、4)その色素の組成を分光光度計で分析している様子

植物は陸上に進出して以来、様々な環境に適応する特徴を獲得し、熱帯から砂漠や極地まで様々な場所・環境に分布しています。そんな陸上植物の限界点の一つである南極大陸では、低温・乾燥・強紫外線にさらされ、種子植物は分布できないためコケ植物が優占する群落がみられます。そのコケ植物の群落は、親個体の断片からクローンを作ることで形成されていると考えられています。

コケ植物は、各種環境ストレスに応じて様々な役割を持った色素を生成することで生存していることが知られています。ただ、南極の厳しい環境がコケ植物のクローン繁殖過程に与える影響は未解明な部分が多く残っています。この過程でもストレス応答には色素生成が重要であると仮説を立てて、研究を進めています。

色素の分析に欠かせないのが、「高速液体クロマトグラフィー(HPLC)」という分析対象となる化合物の移動特性に基づいて分離・検出できる実験装置です。非常に便利ですが扱いには技術が必要なため、この分野における世界的エキスパートであるウーロンゴン大学のSharon Robinson教授の研究室に総研大の支援を受けて留学し勉強することにしました。滞在中は色素の抽出方法からHPLCや分光光度計を用いる分析方法を学ぶことができました。

現在は現地で習得した手法を日本で実施するための実験環境の構築を進めています。私の研究により、南極にコケ植物群落が形成される過程の一端が明らかになると期待しています。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2023/08//21
Date of Return: 2023/09/27

国、都市等

オーストラリア・ウーロンゴン

機関名、受入先、会議名等

University of Wollongong

‍派遣中に学んだことや得られたもの

今回の渡航で2つの初めてを経験しました。1つ目は海外の大学に足を踏み入れることで、2つ目は英語で自分の研究についてディスカッションをすることです。5週間の滞在を通じて、海外の大学に当たり前に通学してコーヒーや昼食を買えるようになり、英語でもなんとか研究の話ができるという実感を得ることができました。今回つかんだ自信を、これからの研究生活の糧にしていきます。

複合科学研究科 極域科学専攻 新井駿一

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