2024.04.24

国際共同実験NA61/SHINE実験における中性K中間子の解析手法の確立

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2023

西森早紀子

素粒子原子核

NA61/SHINE実験を用いたハドロン生成測定過程

私たちは2022年の夏にT2K実験のための新たなデータ取得を行い、現在は解析を進めている。この解析はニュートリノにおけるCP対称性の破れの発見に繋がる。

 ニュートリノは素粒子標準理論では質量がない粒子ですが、ニュートリノ振動という現象の発見により質量をもつことが発見されました。T2K実験では、この現象を用いて粒子と反粒子の性質の違いを検証しています。解析の精度向上のためには、生成されるニュートリノビームについての研究が不可欠で、私はハドロンの飛跡を高精度で検出できるNA61/SHINE実験を用いて測定を行い、T2K実験のシミュレーションに結果を反映させることで、誤差を少なくすることを目指しています。この中でも中性K中間子についての解析に焦点を当てて研究を進めています。この解析は今までに行われたことがなく私が初めての解析者となるので、エキスパートと連携した解析手法の確立が必要です。

 解析するパラメータとしてはT2Kレプリカターゲットの分割方法、中性K中間子の運動量と角度分布があります。T2Kレプリカターゲットの分割方法についてはT2Kのビームシミュレーションを用いて検証し、中性K中間子の運動量と角度分布についてはNA61実験の解析ソフトウェアを用いて行います。本渡航期間では解析手法について議論したのち、解析ソフトウェアの環境構築と使用方法を学びました。

 今後はこの解析を進めて、T2K実験・NA61/SHINE実験両者にインパクトを与えられるような結果を導きたいと思います。本研究の結果をT2K実験に反映させることで、粒子と反粒子の性質の違いを示す「CP対称性の破れ」を発見することに一歩近づくことが期待されます。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2023/11/15
Date of Return: 2023/12/27

国、都市等

ハンガリー、ブダペスト

機関名、受入先、会議名等

エトヴェシュ・ロラーンド大学

‍派遣中に学んだことや得られたもの

今回の派遣先は大学だったので、普段研究所で研究をしている私にとってとても刺激的な毎日でした。私が使用していたオフィスの近くには異なる素粒子実験に参加する多くの学生やポスドクがおり、研究の合間に議論することもできました。受け入れ研究者には一から解析のことを教えていただき、忙しくもとても充実した滞在期間にすることができました。

高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻 西森早紀子
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 ニュートリノグループに所属。ニュートリノを用いた物理で何か新しい発見をしたい。

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