学長メッセージ

永田学長

総合研究大学院大学 SOKENDAI は、「大学共同利用機関」と呼ばれる国立研究機関を教育の場として、次世代を担う博士人材の育成を目的とする大学です。1988 年に国内で初めての国立大学院大学として開設されて以来、基礎学術の様々な分野に約2,500名の博士を送り出してきました。

全国に19 ある大学共同利用機関は、大規模な実験施設や先端的な研究設備、貴重な研究資料を備え、第一線の研究者集団を擁しています。国内外の多くの研究者がその研究設備や資料を共同で利用し、機関の研究者と多彩な共同研究を展開しており、大学共同利用機関は人文学から高エネルギー物理学に至る広範な学術分野を牽引する中核拠点となっています。SOKENDAI の大きな特色は、そのような世界トップクラスの基礎研究が行われている機関を大学院教育の場としていることです。

SOKENDAI のもう一つの特色は、そのユニークな教育体制にあります。国内の殆どの大学では、例えば「人文学研究科日本学専攻」や「理学研究科物理学専攻」と言ったように、学問分野ごとに教育組織が分かれています。一方、SOKENDAI では、「先端学術院」と呼ばれるひとつの教育組織に素粒子・物質・生命・宇宙・情報・歴史・文化の広範な学術領域をカバーする 20 のコースが並置されています。先端学術院の教育課程は、学生自らが専門と定めた学問分野の基本的な知識と教養を修得しながら、その専門に囚われることなく、分野を跨いで主体的に学修や研究活動を行えるようにデザインされています。本学のディプロマ・ポリシーに掲げた「専門力」「独創性」「学際性」「国際力」「倫理性」の5つの力量は、いかなる課題に直面しても、自立した研究者として専門を越えて立ち向かうことができる博士人材を念頭に置いたものです。

今、国際社会は様々な課題に直面しています。気候変動と環境問題、貧困と格差、政治的な対立や紛争などが嘗てない程に社会を脅かしつつあります。爆発的に普及する人工知能などのテクノロジーに社会がどのように向き合っていくのかも大きな課題です。それこそ、10 年後に人類社会がどうなっているか、その姿を想像することさえ困難な状況と言えます。そんな先の見えにくい時代だからこそ、社会はその未来を託すことのできる人材を必要としています。大学は学問の府としてその要請に応えねばなりません。

SOKENDAI は、長期的な視点に立って真に人類社会に資する学術のあり方を見据え、社会の知的基盤を支える学術の継承・発展や高度な研究開発の担い手となり、新たな知を生み出すことができる博士人材の育成を目指して、広く社会に貢献していく所存です。

 

2025年4月1日
総合研究大学院大学長

永田 敬

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