2020.06.09

リング状のタンパク質複合体「プロテアソーム」が正しく組み上がる仕組みの解明

研究論文助成事業 採択年度: 2019

構造分子科学専攻 関口太一朗

分子科学コース

Mutational and Combinatorial Control of Self-Assembling and Disassembling of Human Proteasome α Subunits

掲載誌: 発行年: 2019

DOI: 10.3390/ijms20092308

https://www.mdpi.com/1422-0067/20/9/2308

PR-19-002-2.png
プロテアソームのαサブユニットがつくるリング状のタンパク質複合体

プロテアソームのサブユニットの中でリング状構造をつくることができる組み合わせは限定されていることが判りました。α7サブユニット14個(上)、α4とα7(中央)、α6とα7(下)からつくられるプロテアソームリング複合体の原子間力顕微鏡像。

研究概要

人間の体の約20%はタンパク質でできており、その機能は食べ物を消化する働きから細胞の恒常性維持まで様々です。一般に、1つのタンパク質は1つの機能を持つため、複数種類のタンパク質が組み合わされた複合体を形成することで多様な機能が発揮されます。これらのタンパク質複合体の形成は高度に制御されており、サブユニットと呼ばれる各構成タンパク質がそれぞれの位置に正確に配置されることで初めて機能します。タンパク質複合体の1つであるプロテアソームは、不要なタンパク質を分解する酵素複合体であり、よく似ているが微妙に形が異なっている7種類のαサブユニットが正しい順序で並んでできたαリングを土台にして形成されています。

本研究では、αサブユニットがどのようにして順番を違えずに正確に並ぶことが出来るのか、そのメカニズムに着目しました。そこで私たちは、特定のαサブユニットに部位特異的にアミノ酸変異を導入し、他のサブユニットと混ぜ合わせることで、本来のαリングとは異なるサブユニットの配置を持つ、リング状の構造を持つタンパク質複合体を人工的に創り出しました。私たちはこうした研究を通じて、リング状の構造を形成できるのは7種類のαサブユニットのうちの極めて限られた組み合わせであることを見出しました。さらに、こうして創り出したリングの3次元構造をつぶさに調べることにより、リングの形成に必要なのは、サブユニット間のインターフェースにおける局所的な相互作用が成立することに加えて、7つのサブユニットで円環をうまく閉じることができる組み合わせであることを示しました。

成果論文の書誌情報

  • 誌名 International Journal of Molecular Sciences
  • 出版日 2019年5月9日
  • 論文題目 Mutational and Combinatorial Control of Self-Assembling and Disassembling of Human Proteasome α Subunits
  • 著者名 Taichiro Sekiguchi, Tadashi Satoh, Eiji Kurimoto, Chihong Song, Toshiya Kozai, Hiroki Watanabe, Kentaro Ishii, Hirokazu Yagi, Saeko Yanaka, Susumu Uchiyama, Takayuki Uchihashi, Kazuyoshi Murata and Koichi Kato
  • DOI  10.3390/ijms20092308

物理科学研究科機能分子科学専攻 関口太一朗

PAGE TOP