2020.06.11

磁束ピンニング効果を用いた非接触型微小擾乱抑制機構の提案

研究論文助成事業 採択年度: 2019

宇宙科学専攻 柴田拓馬

宇宙科学コース

磁束ピンニング効果を用いた非接触微小擾乱抑制機構のための基礎特性評価

掲載誌: 発行年: 2019

DOI: 10.2322/jjsass.67.126

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass/67/4/67_67_126/_article/-char/ja/

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図1. 磁束ピンニング効果を用いた非接触微小擾乱抑制機構構成

研究概要

宇宙望遠鏡を用いることによって,現在までに,従来の地上観測では得ることのできない多くのデータを取得することに成功してきました.将来の宇宙観測ミッションでは,より遠くの対象を高精度で観測することが要求されます.一般的に宇宙望遠鏡は基本的な機能(姿勢制御,電力,通信等)に必要とされる機器が搭載されたバス部と衛星ミッションのための機器が搭載されているミッション部に大きく分けることができます.高精度観測には,ミッション部に搭載されている機器の指向方向を安定化することが必要となります.このために,擾乱(じょうらん)抑制法は重要な技術です.ここでいう擾乱とは振動や熱等のことであり,宇宙望遠鏡内部に搭載されている機器から生じます.これらの擾乱がミッション機器に伝達すると,その観測精度や取得データの解像度を低下させます.この課題を解決するため,該当論文では擾乱である振動や熱を生じる機器が搭載されているバス部と,観測機器を有するミッション部間で磁束ピンニング力を用いた近距離フォーメーションフライトを行う新規技術を提案しています(図1).

この技術によりミッション部とバス部を磁気的につなぎ,熱の伝達パスを制限します.加えて磁束ピンニング力は、微小運動を仮定すればばねダンパ特性(車のサスペンションのように振動を減衰させる特性)を有するため、この特性を振動抑制のために利用します.該当論文では数値解析により,提案機構の実現可能性を議論しています.磁束ピンニング力のための簡易数値解析モデルを実験的に評価し,その妥当性と性能を評価しています.その上で提案機構の実現可能性について、衛星外から加わる力である太陽輻射圧を考慮し数値的に評価しています.結果として, 太陽輻射圧が作用したとしても,ある周波数特性を達成しながらミッション部とバス部を受動的に維持することが可能であることを明らかにしました.

掲載論文

  • 日本航空宇宙学会論文集 2019年 67巻4号 p.126-135. 磁束ピンニング効果を用いた非接触微小擾乱抑制機構のための基礎特性評価 柴田拓馬,坂井真一郎 https://doi.org/10.2322/jjsass.67.126

宇宙科学専攻, 柴田拓馬

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