2020.11.16

宇宙ゴミの超高速衝突で生じる電気的現象の解析

研究論文助成事業 採択年度: 2020

宇宙科学専攻 万戸雄輝

宇宙科学コース

超高速衝突によるイジェクタの時間分解発光スペクトルの解析

掲載誌: 発行年: 2020

DOI: 10.2322/jjsass.68.133

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass/68/4/68_68_133/_article/-char/ja/

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宇宙ゴミの超高速衝突で生じる各種電気的現象

秒速7km以上という超高速で飛翔する宇宙ゴミは衝突によって単に材料を破壊する物理的破壊現象の他に各種電気的現象を生じます。当該論文では、電気的現象の一つである衝突プラズマの密度をより精確に推定する手法を提案しました。

宇宙空間に大量に漂う宇宙ゴミは秒速7km以上で飛翔しているため、運用中の人工衛星との衝突が懸念され喫緊の課題となっています。宇宙ゴミを含めた超高速飛翔体による衝突は、人工衛星表面にクレータの形成や二次デブリを発生させるような物理的破壊現象の他に、衝突プラズマやマイクロ波放射のような電気的現象を発生させます。物理的破壊現象は、人工衛星の防護バンパーの開発に対する研究が多く為されてきましたが、電気的現象に関する知見は少なく、人工衛星へ与える影響が明らかにできていません。

そこで、当該論文では超高速衝突で生じる衝突プラズマのプラズマ密度を精確に求める手法を提案しました。従来手法では、衝突材料由来の輝線スペクトルの影響により、分光法では精確なプラズマ温度や密度の推定が困難でした。しかし、時間と空間(波長)方向を同時に計測できる分光器を用いることで、輝線スペクトルの影響を除去し精確なプラズマ温度と密度の推定を提案しました。

人工衛星の太陽電池パネルや電力ハーネスへの宇宙ゴミによる超高速衝突での衝突プラズマを介しての持続放電の発生と宇宙機の短絡故障が生じる可能性が指摘されています。本成果により、精度の高いプラズマ密度推定手法を用いることで短絡故障リスクを見積もることに貢献できました。

書誌情報

超高速衝突によるイジェクタの時間分解発光スペクトルの解析、万戸雄輝、日本航空宇宙学会誌、2020年68巻4号 pp.133~141, https://doi.org/10.2322/jjsass.68.133


物理科学研究科宇宙科学専攻 万戸雄輝

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