2022.01.11

光で「脱力系」細胞を作り出す

研究論文助成事業 採択年度: 2021

基礎生物学専攻 山本啓

基礎生物学コース

Optogenetic relaxation of actomyosin contractility uncovers mechanistic roles of cortical tension during cytokinesis

掲載誌: 発行年: 2021

DOI: 10.1038/s41467-021-27458-3

https://www.nature.com/articles/s41467-021-27458-3

青色光によるカエル胚の「脱力」

細胞の出す力を弱める光遺伝学ツール「OptoMYPT」を発現するカエル胚における、アクチンの蛍光画像。光照射後に細胞辺がたるんでいる様子が見てとれる。

私たちの身体の中では、アクチン細胞骨格と呼ばれるタンパク質が必要な時・必要な場所で力を出すことで、細胞や組織の柔軟な変形を可能にしています。しかし、アクチン細胞骨格の役割を調べるための薬剤処理や遺伝子破壊といった従来の方法は、細胞や組織全体に作用してしまいます。この時間的・空間的分解能の低さは、細胞内のスケールで生命現象を理解する上での大きな障壁となっていました。そこで本研究では、より高い分解能で細胞骨格の出す力を操作できるツールの開発を目的としました。そこで着目したのが、光によって活性化するタンパク質を利用して細胞の機能を操作する「光遺伝学」という技術です。光照射する位置(10μm以上の精度)や時間を自在に調節できるという利点を活かし、細胞骨格の出す力を限定的に弱めることができれば、従来の方法に代わる有用なツールとなるのではないかと考えました。

本研究では、アクチン細胞骨格の制御タンパク質と既存の光遺伝学用のタンパク質を融合することで、青色光照射により細胞の出す力を弱めるツール、OptoMYPTを開発しました。さらに、OptoMYPTを用いてカエル胚の細胞間ではたらく力や、培養細胞における細胞質分裂中の力の操作が可能であることを示しました。

こうした光を用いた力の操作技術を駆使することで、アクチン細胞骨格の関与する多様な生命現象の理解や、人工臓器の自在なデザインなど、基礎研究から臨床応用まで多面的に貢献することが期待されます。

書誌情報

  • タイトル: Optogenetic relaxation of actomyosin contractility uncovers mechanistic roles of cortical tension during cytokinesis
  • 著者: Kei Yamamoto, Haruko Miura, Motohiko Ishida, Yusuke Mii, Noriyuki Kinoshita, Shinji Takada, Naoto Ueno, Satoshi Sawai, Yohei Kondo, Kazuhiro Aoki
  • 掲載誌: Nature Communications
  • 掲載年:2021
  • DOI: 10.1038/s41467-021-27458-3

生命科学研究科 基礎生物学専攻 山本 啓

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