2022.05.24

絞り藍染めを媒介としたモノと人の物語

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2021

李南瑾

人類文化研究(地域文化学)

絞り藍染布の倉庫

絞り藍染め布の倉庫では、2人のペー族女性が、お客さんが欲しがる布を探しています。山のように積み上げられた布の中から、必要な模様やサイズの布を素早く探し出すのは簡単なことではありません。体力と気力が必要です。

本研究は、中国雲南省ペー族自治州周城村の絞り藍染めを事例として、絞り藍染めをめぐる諸実践とそれが紡ぎだすペー族の生活世界を明らかにすることを目的としています。先行研究においては、絞り藍染めがペー族の無形文化遺産であることを前提として、周城村のペー族文化や社会関係が解釈されてきました。その結果、絞り藍染めをめぐる諸実践を通じた多民族的で地域横断的なネットワークとそれが織りなす周城村の生活世界が十分に議論されてきませんでした。

上述した問題を意識したうえで、調査者は、まず、調査地における親族関係、儀礼活動などに関して、フィールド調査を実施しました。その後、絞り藍染め工房で布染めや布絞りなどの技術を学びながら参与観察を実施しました。そして、新型コロナウイルス感染症が大理における絞り藍染め産業にもたらした影響や絞り藍染めの担い手たちの対応策に関して聞き取り調査をしました。

本調査を通じて、まず、絞り藍染めの製作工程、そこで使用される道具、布の使用方法、絞り藍染めの民族および地域横断的な分業体制が明らかとなりました。つぎに、絞り藍染め生産が親族関係や儀礼活動と密接な関係にあることから、絞り藍染めの作り手の社会関係が明らかとなりました。さらに、1980年代後半から2000年代まで、調査地の人びとが日本の名古屋市有松絞りの業者からの生産委託を受けたことが分かりました。それらを踏まえて、海外からの生産委託による絞り藍染めにかかわる技術の越境やそれがペー族の絞り藍染めにもたらした影響が、次の課題として浮かび上がりました。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 01/11/2021
Date of Return: 20/02/2022

国、都市等

中国雲南省大理ペー族自治州

機関名、受入先、会議名等

大理薄技在文化発展有限責任公司

‍派遣中に学んだことや得られたもの

派遣プログラムによって、調査者は参与観察を行うことができました。参与観察は、現地の人々と一緒に生活をして、彼らがやることをよく見て言うことをよく聞くことです。その一方で、現地の人々の関心に応じるように、調査者が自分のあり方を考える必要もあります。このように現地の人びととの双方向的なやり取りを通じて、調査者は自らのバイアスに気づくことができ、世界に対する見方も変わりました。おそらく、これは人類学の魅力の一つだろうと思います。

文化科学研究科 地域文化学専攻、李南瑾

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絞り藍染めの染液を観察している調査者

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