2022.09.14
サメ・エイ類の妊娠期間はどんな要因で決まるのか?
研究論文助成事業 採択年度: 2022
徳永壮真
核融合科学
Factors affecting gestation periods in elasmobranch fishes.
掲載誌: Biology Open 発行年: 2022
DOI: 10.1242/bio.059270
体サイズ(A:雌の成熟体重、B:子の出生時の体重)が大きな種ほど、妊娠期間が長い傾向にあることがわかる。1つのプロットが1つの種のデータを表す。
卵ではなく子を産む胎生の動物において、妊娠期間(子をみごもる期間の長さ)は、個体数の変動に関与する重要なパラメータです。サメ・エイ類の中には胎生の種が数多く存在しますが、その妊娠期間は数か月から数年まで種によって大きく異なります。このような種間差をもたらす要因として、これまでに体温(水温)の影響は報告されてきましたが、その他の要因は明らかになっていませんでした。そこで本研究では、36種のサメ・エイ類について、妊娠期間、体重、体温(水温)、一度に産む子の数のデータを文献から集め、解析を行いました。
解析の結果、体重が大きな種ほど妊娠期間が長くなる傾向が見られました(図A,B)。これは、体重が大きな種ほど体重1kgあたりの代謝速度が低くなるという、生物における一般法則によるものだと考えられました。また、暖かい海に生息する種や一度にたくさんの子を産む種は妊娠期間が短い傾向にあり、これらの結果も代謝速度の枠組みで説明することが可能でした。
本研究により、サメ・エイ類の妊娠期間は代謝速度によって決まる可能性が示唆されました。しかし、代謝速度を直接測定したわけではないため、今後さらなる研究が必要です。本研究で得られた知見は、繁殖に関する情報が少ない種の妊娠期間を推定したり、その種の個体数の変動を予測したりする上で、有用であると考えられます。
書誌情報
- タイトル:Factors affecting gestation periods in elasmobranch fishes.
- 著者:Tokunaga, S., Watanabe, Y. Y., Kawano, M. and Kawabata, Y.
- 掲載誌:Biology Open. 11, bio059270.
- 掲載年:2022
- DOI: 10.1242/bio.059270
複合科学研究科 極域科学専攻 徳永 壮真