2022.11.14

先端的顕微鏡による線虫胚イメージングの試み

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2022

藤井謙

遺伝学

従来の顕微鏡撮影による線虫初期胚の明視野画像と蛍光画像

左は明視野、右は蛍光顕微鏡による線虫胚二細胞期の画像。右の図の矢印は中心体、矢頭(左)は染色体、矢頭(右)は核を示している。

中心体は動物細胞内に2つ存在しており、細胞の中を移動し適切に配置されることが細胞の正常な機能に必要であることが知られています。さらに中心体の配置制御は細胞内の様々な因子との相互作用によって行われていることが明らかになっています。これまでの私の研究では、中心体を配置するための新たなメカニズムを明らかにしてきました。

今回SOKENDAI研究派遣プログラムの助成を得て、米国Marine Biological Laboratory (MBL)を訪れ、MBLで開発された特殊な先端的顕微鏡を使用した線虫の撮影に挑戦しました。方向非依存性微分干渉顕微鏡を使うと細胞の局所的な屈折率についての情報が得られます。その他にも広範囲にわたって時間分解能が高く、細かく時間を区切った共焦点顕微鏡像を得られる顕微鏡や、細胞内の局所的な蛍光偏光を検出できる顕微鏡も試しました。これらの顕微鏡を使用して観察を行うためにはそれぞれの顕微鏡にあった方法でサンプルを用意する必要があります。例えば、方向非依存性微分干渉顕微鏡では、試料以外のものがサンプルに混ざると解析に影響を与えるため、サンプルから不要なものを排除する工夫が必要でした。そして試行錯誤の末に観察可能なサンプルを準備しテスト撮影を行うことができました。得られた画像は現在解析中です。

MBLでは古くから顕微鏡開発が盛んに行われているため、多くの先端的顕微鏡があります。このような顕微鏡は製品化されておらず日本では使うことができないため、今回の派遣で先端的顕微鏡を使って撮影することによって、細胞内のさまざまな情報が得られることを実感し、今後の研究の方向性を考える上でも視野が広がりました。今回の滞在で、顕微鏡開発者と相談しながらその場で工夫して適した線虫胚のサンプル調整方法を確立できたことは、所属研究室での今後の研究にも役に立つと思います。

派遣先滞在期間

Date of Departure:2022年8月10日
Date of Return:2022年8月18日

国、都市等

アメリカ合衆国・マサチューセッツ州・ウッズホール

機関名、受入先、会議名等

Marine Biological Laboratory

派遣中に学んだことや得られたもの

MBLは顕微鏡開発が行われている世界的な研究施設の一つです。滞在中に先端的顕微鏡開発を行っている研究室を訪れることで、新たな顕微鏡が開発される環境を垣間見ることができました。実際に開発者の方々から顕微鏡の仕組みについて教えていただけたことは顕微鏡についての理解と興味を深めることに繋がったと思います。今回、私は初めて海外の研究所を訪れましたが、学生を含めた研究者の方々が頻繁に議論していることは刺激になりました。


生命科学研究科 遺伝学専攻、藤井謙

PAGE TOP