2023.04.27

南極の昭和基地とDavis基地における大気重力波の特性

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2022

吉田理人

極域科学

昭和基地とDavis基地

昭和基地とDavis基地はそれぞれ左図の赤点に位置する。右上は昭和基地のPANSYレーダー、右下はDavis基地のSTレーダー。出典:PANSYレーダーホームページ、AADホームページ

私は大気重力波(以下、重力波)という波について研究しています。この重力波は浮力を復元力とする大気波動で、重力波をシミュレーションで再現できるかどうかは、中長期的な予報の精度を左右します。この重力波は運動量を遠方へと輸送・供給することで、その場の風を加減速し、大気大循環を駆動します。重力波は大気レーダーでは観測できますが、その空間スケールは10~数1000kmと幅広く一般的な数値シミュレーションでは完全には再現できません。これまで私は、南極昭和基地(69°S,39.6°E)の大型大気レーダー(PANSY)を使って重力波の特性を調べ、観測データを用いてシミュレーション結果をより確からしいものにした再解析データ(ERA5)がどこまで実際の重力波を再現できるかについて研究してきました。今回は豪州の所有するDavis基地(68.6°S,78°E)のSTレーダーと大気再解析データを用いて同様に再現性を確かめるとともに、場所による重力波の特性の違いを調べました。

今回私は、ホドグラフ解析という手法を用いて重力波の周期や伝播方向、運動量輸送などの各種パラメータを調べ、両データ間で比較しました。その結果、再解析データは観測よりも運動量輸送を過小評価すること、昭和基地とDavis基地では一部パラメータの傾向に違いがあることがわかりました。

今後も研究を継続し、波のパラメータからどのように伝播してきたかを辿るレイトレーシングを用いた波源の特定や観測地周辺の気象条件との比較などを行い、シミュレーションが重力波を再現する実力や条件を明らかにしていきます。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2023/01/06
Date of Return: 2023/02/25

国、都市等

オーストラリア・ホバート

機関名、受入先、会議名等

Australian Antarctic Division

‍派遣中に学んだことや得られたもの

受け入れ教員のD. Murphy教授は世界的に著名な重力波研究者で、彼との議論はとても勉強になりました。英語での議論は最初意思疎通に手間取りましたが、徐々に伝わるようになって良かったです。私は今回が初めての海外での研究の機会だったので、すべてが良い経験になりました。

複合科学研究科 極域科学専攻 吉田理人

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