2023.08.02

メタ認知の機能的役割と神経機構

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2022

南條啓孝

生理科学

メタ認知の神経活動

この図は, 確信度評定を伴う知覚意思決定課題中の脳活動を3テスラMRI装置で撮像して得られた, メタ認知プロセスの神経基盤を示しています. (A) 我々が自己の認知を知る過程 (メタ認知的モニタリング, 青色)と行動を切り替える制御過程 (コントロール, 赤色) に関係する神経基盤です. (B) それらの過程に共通する神経表象を紫色で示しています. 画像中のP (後), A (前), L (左), R (右)は, 向きを示しています. X及びyは, MNI座標を表しています.

メタ認知は我々の認知を監視・評価し, 後続する行動や精神活動を制御する認知機能として知られています. 例えば, ヒトが何かを思い出そうとするときに思い出したい対象は思い出せないが, それを”知っているということを知っている”という状態にしばしば遭遇します. この状態を認知したときに我々は対象を思い出すために, 検索時間を延長することが予想されます. 本研究では, このような自己の認知について”知っている”ことと”実行する”機能に関わる神経基盤の解明を目指してきました.

これまでにメタ認知を扱った神経科学分野の研究では, 前者の事故の認知をモニターする過程はよく扱われてきましたが, その結果行動を制御する過程については殆ど扱われておりませんでした. 自己の認知を知っていても (理解していても), 制御に困難を抱える実行機能障害などの理解の上でもこれらの神経基盤を理解することは重要になってきます. 今回扱ったデータは, 既に所属の生理学研究所が保有する磁気共鳴画像装置で取得しており, 前処理などの解析の一部を終了させていたものでした. そのため, 本プログラムでは, 論理の整理や論文執筆に重点をおいて進めてきました.

派遣先滞在期間

Date of Departure:  2022/04/01
Date of Return:  2023/03/05

国、都市等

埼玉県和光市, 日本

機関名、受入先、会議名等

国立研究開発法人 理化学研究所 脳神経科学研究センター

発表題目

1) Nanjo Y. et al., Neural Dissociation of Metacognition Under Confirmation Bias, NEURO2022, 2022-06, Okinawa [査読あり・ポスター]

2) Nanjo Y., et al., The Neural Substrates of Metacognitive Monitoring and Control, Neuroscience (society for neuroscience), 2022-11, Sandiego [査読あり・口頭]

3) 南條啓孝, et al., メタ認知の機能的役割と神経メカニズム, 第41回日本基礎心理学会, 2022-12, 千葉大学 [査読なし・ポスター]

‍派遣中に学んだことや得られたもの

本派遣プログラム中は, 認知神経科学, 中でも意思決定について多くを学ぶことができました. ヒトのような複雑な認知機能を有する動物では, ある行動を実行すること自体が目的なのではなく, 目的遂行のためにその行動を実行する. このような認知機能を支える前頭前野について深い知見を得ることができました. また, 我々の研究分野では少なくないことですが, 結果に応じて仮説を組み替えることの危険性など科学研究としての妥当な考え方を学ぶことができました.

生命科学研究科 生理科学専攻 南條啓孝

                                                             

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