2023.08.02

遠方銀河の磁場が電波観測に及ぼす影響

研究論文助成事業 採択年度: 2022

大前陸人

天文科学

Effects of depolarizing intervening galaxies on background radio emission. I. Global disk magnetic field

掲載誌: Publications of the Astronomical Society of Japan発行年: 2023

DOI: 10.1093/pasj/psac045

介在銀河の模式図と本研究の計算結果の例(RM分布とファラデースペクトル)

上図は背景光源の電波放射が介在銀河に影響を受けている様子を表した模式図です。左下図は介在銀河のRM分布を示しており、黒円は背景放射が通過する領域(空間分解能)です。右下図は左図の黒円領域の放射をファラデートモグラフィーをして得られるスペクトルです。背景のヒストグラムは左図の黒円領域のRM分布であり、スペクトルのピークとヒストグラムのピークが一致していることがわかります。ファラデートモグラフィーにより、空間分解能以下のRMが検出できることが明らかになりました。

銀河の磁場は星形成やガスの分布に影響を与えます。同時に、銀河の進化を司る最も基本的な過程は星形成ですので、銀河の磁場を推定することができれば、銀河進化の理論に対してフィードバックをかけることが期待できます。しかしながら、銀河磁場がどのように進化してきたかが明らかになっていません。銀河磁場の進化を調べるためには近傍銀河だけでなく遠方銀河の磁場観測が重要です。しかし、遠方銀河の磁場を計測する手段は極めて限られています。遠方銀河の磁場を調べる方法として 介在銀河の電波観測があります。ここで、介在銀河とは明るい電波源の視線上に重なっている銀河のことです。背景の天体が放つ電波は、介在銀河の磁場によってファラデー回転という現象を起こし、ファラデー回転量度 (Rotation Measure; RM)として観測されます。今まで、さまざまなモデルを使用して、介在銀河の磁場を理解するために多くの研究が行われてきました。近年、RMを推定するためにファラデートモグラフィーという新たな手法が採用されています。しかし、介在銀河に対してファラデートモグラフィーを用いることで、どのようなRM(磁場)情報が得られるのかあまり考えられていませんでした。

本研究では、ファラデートモグラフィーを取り入れた介在銀河の擬似観測シミュレーションを行いました。ファラデートモグラフィーを用いた際に得られるスペクトル(FDF)は、観測の空間分解能(ビーム)内のRM構造を表しました。この結果、空間分解能以下のRM構造をファラデートモグラフィーという手法によって分解しうることを明らかにしました。

この結果は、今後の電波観測において分解できないスケールの磁場構造(RM構造)を推定する際に大いに役に立つと考えています。今後はこの結果を実際の電波観測に応用していく予定です。

書誌情報

  • タイトル:Effects of depolarizing intervening galaxies on background radio emission. I. Global disk magnetic field
  • 著者: Rikuto Omae, Takuya Akahori, Mami Machida
  • 掲載誌: Publications of the Astronomical Society of Japan
  • 掲載年:2023
  • DOI:10.1093/pasj/psac045

物理科学研究科 天文科学専攻 大前陸人

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