2025.01.21
トカマク装置におけるマルチスケール乱流間相互作用の研究
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2024
那須達丈

核融合プラズマの乱流現象の概要。時間・空間とも広いスケールに多様な乱流現象が存在し、それらが相互作用するというモデルが考えられています。
将来の核融合炉やITERのプラズマでは、ヘリウムの原子核による電子への加熱がイオンへの加熱よりも支配的になり、電子の温度が卓越すると考えられています。核融合のプラズマは中心の温度が非常に高く、周辺で低くなるため、その勾配が励起する不安定性が微細なスケールの乱流を駆動します。このスケールは現在支配的なイオンスケールより小さく、電子スケールと呼ばれます。近年、シミュレーション研究の進展から電子スケールとイオンスケールや装置サイズ程度のマクロスケールとの間の相互作用がプラズマの熱や粒子の損失に重要であることが分かってきました。私の研究は、このような電子・イオンスケール乱流とさらに大きなスケールの現象との相互作用を実験的に解明することを目的としています。今回の渡航では、ジェネラルアトミクス社の持つDIII-Dという代表的なトカマク装置で、過去の計測データの解析と新たな計測を行いました。
過去のデータでは、マクロスケールの電子温度の自発的な変動と同時に、ミクロスケールの電子スケール乱流強度とイオンスケール乱流強度が変動していたことが分かりました。ミクロスケールの乱流に対してマルチスケールからの効果が現れていることが実際に分かりました。
今回の成果は、トカマク装置においてマルチスケール乱流間相互作用が現れていることを発見したもので、さらに具体的に相互作用の検証を進める足掛かりとなります。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2024/9/15
Date of Return: 2024/11/24
国、都市等
アメリカ・カリフォルニア州・サンディエゴ
アメリカ・ジョージア州・アトランタ
機関名、受入先、会議名等
ジェネラルアトミクス社・カリフォルニア大学ロサンゼルス校
66th Annual Meeting of APS-DPP
発表題目
Experimental investigation for cross-scale interaction between electron-scale and ion-scale turbulence in Large Helical Device (LHD)
派遣中に学んだことや得られたもの
今回の派遣では、UCLAのマイクロ波チームや同世代の研究者と交流を深めることができたことが最も有意義でした。日本では同世代で同じ計測器に取り組んでいる研究者はほとんどいないため、これから議論を続けていく友人を見つけられたことがありがたい価値です。また、英語で議論をする経験もほとんどなかったため、私の不慣れな英語にも親切に相手になっていただいたチームの方々には大変感謝をしています。
物理科学研究科 核融合科学専攻 那須達丈