2025.11.25
CM46への参加、およびPSIにおけるビームシフトの参加
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025
中林拓帆
素粒子実験のビームタイムでは加速器や検出器が正常に動いているかを確認し、不具合が発見されるとそれを修復して再度始動させるビームシフトと呼ばれるものが存在します。
画像はそれに参加して、不具合がないかモニターの前で監視している様子です。
i. 背景(CM46)・・・実験グループ内での自身の研究の周知及びソフトウェアトリガーに関するアイデアの共有を行いました。これまでのCOMET Phase-Ⅰ実験ではシミュレーションからCydetと呼ばれる検出器において高いトリガーレートが予想されており、このトリガーレートに対してデータの読み出しが間に合わないという課題がありました。そこでソフトウェアによるトリガーシステムを導入することで必要なイベントを減らさず、バックグラウンドによるトリガーレートを削減するシステムの開発を行っています。
しかし、この開発についてオフィシャルな実験グループミーティングでの周知は行われていなかったため、自身の研究発表と同時に開発中のソフトウェアトリガーについての理解を得られるよう発表を行いました。
ii. 結果の要点(CM46)・・・ソフトウェアトリガーに対する周知と導入に対する理解が得られました。
iii. 学術的・社会的意義や今後の展望(CM46)・・・ソフトウェアによるトリガーシステムはATLAS実験のような大規模実験では導入されているものの、開発に対しての手間や難易度から中規模実験以下での導入が進んでいませんでした。そこで、COMET実験でのソフトウェアトリガー導入が成功すれば、中小規模の実験でソフトウェアトリガー導入のための重要なマイルストーンとなることが予想されています。
i. 背景(PSI)・・・ビームテストの知見とデータ読み出し(DAQ)システムの見学をしました。PSIではMEG実験と呼ばれるCOMETと同じミューオンを使った新物理探索実験が行われています。そこでMEG実験のビームタイムに参加し、COMET Phase-Ⅰでも体験するであろうビームタイムの知見を深めることを目的として出張を行いました。加えて、すでに動いている実験のDAQシステムを観察することで、自身の開発しているシステムについての知見の蓄積も見込めると考えていました。
ii. 結果の要点(PSI)・・・ビームシフトの知見が得られたとともに、自身が開発するDAQシステムの完成形の一つを見学したことで研究の見通しを立てることができました。
iii. 学術的・社会的意義や今後の展望(PSI)・・・COMETで使用されるデータ読み出しシステムはストリーミングDAQと呼ばれ、分散処理を可能にする新世代のDAQシステムです。そのためCOMET実験において、この開発及び完成形のイメージがついたことで、新世代のDAQシステムの導入例としてと開発の加速が見込めると考えています。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2025/6/29
Date of Return: 2025/7/21
国、都市等
フランス・クレルモン=フェラン、スイス・フィリゲン
機関名、受入先、会議名等
COMETコラボレーションミーティング、PSI
派遣中に学んだことや得られたもの
CM46では自身の研究、およびソフトウェアトリガーの重要性、必要性について発表し、コラボレーターの方々にCOMET Phase-1におけるソフトウェアトリガー運用の理解が得られました。加えて他の検出器グループの開発状況から自身の研究と立ち位置を明確にすることができました。PSIについては他のミューオンによる新物理探索実験のビームタイムに参加することで自身の実験グループで今後行うことになるビームタイムや機材の調整への知見を深めることができました。また、DAQシステムや検出器についてCOMETで生かせる知見を得ることができ、今後の研究活動における見通しを立てることができたと思います。
素粒子原子核コース 中林拓帆