2025.12.04
複数スカラー場特有の非自明なスカラー・テンソル理論の追加項の自然な生成
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025
片山友貴
この項は2つ以上のスカラー場が含まれるスカラーテンソル理論の一般形に含まれる項です。今回、我々はこの項を自然な形で得ることに成功しました。
今回の派遣プログラムにおいては、岡山理科大学の山内大介講師の主催する研究室に滞在し研究しました。ここではスカラー場を複数含むスカラーテンソル理論の研究を行っていました。
現在の物理学で最もよく現実を記述する重力理論は一般相対性理論です。この理論は”テンソル場”と呼ばれる量のダイナミクスを予言する理論なので、しばしば ”テンソル理論” とも呼ばれます。そこに ”スカラー場” と呼ばれる量を絡み合わせることでテンソル場のダイナミクスを変更することができ、既存の重力理論では説明できない ”動く暗黒エネルギー” などを説明することができると期待されています。その理論を”スカラー・テンソル理論” と呼びます。この理論には非常に一般的な形式がいくつか知られていて、そのうちの最も有名なものは ”ホルンデスキ理論 ” と呼ばれます。
一方でスカラー場が複数存在している場合の一般的な形式は完全な理解が得られていませんが、2017年に立教大学の赤間進吾氏と小林努教授(当時)によってスカラー場が2つ以上存在しないと現れない非自明な項が指摘されていました。
今回、私はホルンデスキ理論を与える ”新しい定義” を構成して、それを複数のスカラー場を持つ場合に拡張しました。その時に彼らが指摘していた非自明な項が自然に生成されることを見出しました。
今後は更に研究を進めることで複数のスカラー場を含むスカラー・テンソル理論の理解の進展を目指していきたいと考えています。
なおarXiv上でプレプリントの形として本研究成果が公開されました。
https://arxiv.org/abs/2511.15423
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2025/7/8
Date of Return: 2025/10/5
国、都市等
日本、岡山市
機関名、受入先、会議名等
岡山理科大学
派遣中に学んだことや得られたもの
私が在籍している基盤機関である素粒子原子核研究所にはスカラー・テンソル理論や修正された重力理論に精通した教員が在籍していないことから、当該テーマに精通した山内大介講師のもとに滞在して、議論やインプットを行うことができたことは非常に貴重な機会だと感じております。また山内研究室には若い学生が多く在籍しているので、一緒に勉強することで周辺分野の新しい知識を数多く吸収することができました。
高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻 片山友貴
重力理論の宇宙論的スケールでの振る舞いを通した、重力理論の検証や暗黒エネルギーの正体、およびそれらの究極理論からの一貫した説明可能性に興味があります。そのために宇宙論スケールにおける重力理論の統合された一般的な記述方法を探っています。