2026.01.29
韓国 済州(チェジュ)の工芸技術―アオツヅラフジ・ヤダケー
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025
KIM HYE IN
アオツヅラフジを用いた帽子の成形工程と、ヤダケによる籠の製作
韓国と日本は、それぞれの環境条件に応じて、利用する植物素材とその活用技術を発展させてきました。その中で済州は、文化的に韓国と日本を結ぶ架け橋とも称される重要な研究地である一方、工芸技術に関する体系的な収集や分析が十分に行われてこなかった点が指摘できます。そこで本調査では、制作者への聞き取り調査や技術の映像記録に加え、素材としての植物の持続的利用に対する制作者の取り組みや、生業として技術をどのように発展させてきたのかについて、多角的に調査を行いました。
済州のアオツヅラフジ(蔓類)およびヤダケ(ササ類)の利用には、他地域とは異なる民俗分類や知識体系が見られるだけでなく、いずれの地域でも確認されていない技術が継承されています。具体的には、アオツヅラフジを隙間なく編み上げる技法や、ヤダケを幾度も手入れし、マダケのように使用する技術が挙げられます。両植物は韓国内陸部や日本でも利用が確認されていますが、済州では技術が極度に洗練されており、環境に応じた独自の発展を遂げてきました。
今回の済州調査は、環境条件による植物利用の発達と制作技術の研磨という観点から重要な資料となります。両国に共通する植物素材を通じて、活用技術の共通点と相違点を明らかにし、制作者が自然と向き合いながら技術を継承してきた過程を考察する研究は、民俗学のみならず人類学的観点からも意義を有します。さらに、技術の往来を手がかりに、両国の民衆がどのような交流を重ねてきたのかを推察する点において、交流史研究に新たな視座を提示するものと考えられます。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2025/12/02
Date of Return: 2025/12/10
国、都市等
韓国 済州(チェジュ)
機関名、受入先、会議名等
濟州特別自治道廳 世界遺産本部 遺産政策部 遺産政策課
派遣中に学んだことや得られたもの
民俗調査におけるフィールドワークでは、調査対象者とどれだけ継続的に関わることができるかが重要です。本派遣では、短期間に集中的に調査を行うことで、信頼関係を築くことができ、今後の継続調査につながる重要な成果を得ました。済州の生活文化は韓国国内でも独自性が高く、日本との文化的接点も指摘されています。韓国と日本の技術交流を考察する上で、済州調査は地政学的にも不可欠であり、調査過程で明らかになった制作技術の工程や植物に蓄積された民俗的知識体系は、韓国の内陸部や日本とも異なっています。これらは、与えられた環境の中で生活様式を形成してきた人類のあり方を示す重要な事例といえます。
日本歴史研究コース KIM HYE IN
韓国と日本における八種の植物の利用を調査し、それぞれの植物が各国の文化の中でどのような位置づけを持っているのかについて研究しています。用材植物を研究対象とし、「人間がものを継続的に制作し、それを伝承していく原動力とは何か」に焦点を当て、民俗学的観点から調査を進めています。また、その答えを探る過程において、人と人との関係性の中で紡がれる多様な語りや経験についても学んでいます。