2026.02.09

疾患の診断法に関するエビデンス統合解析手法の研究

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025

佐々木光太郎

統計科学

 

 

 

 

外れ値を含む診断法のメタアナリシスにおける既存手法と開発した手法の解析結果の例
外れ値を含む診断法のメタアナリシスにおける既存手法と開発した手法の解析結果の例

診断法のメタアナリシスにおいて、対象患者や研究デザインが他の研究と極端に異なる外れ値に相当する研究(図中の研究D)が含まれていると、既存の解析手法による統合結果はその研究に大きく引っ張られる傾向にあります。本研究で開発した解析手法は、そのような研究が含まれていても、データの傾向を基として外れ値の影響を緩和した統合解析を可能とします。感度は診断精度を表す指標の一つであり、実際に疾患がある人を検査で正しく陽性と判定できる確率を示します。

 医療分野では、疾患の診断法の精度に関する既存のエビデンスを統合するためにメタアナリシスという解析手法が広く活用されています。例えば、COVID-19が流行した時期には、PCR検査などの診断法の精度を調べる研究が様々な研究グループにより実施されました。メタアナリシスは、そうした個々の研究が提示するエビデンスを統計学的に統合し、信頼性の高い結論を導き出すための解析手法です。しかしながら、実際の研究には他の研究と極端に異なる背景から生じた「外れ値」に相当する研究データが含まれることがあり、こうした外れ値を統合の対象に含めると、統合解析の結果にバイアスが生じ、誤った結論を導くリスクがあることが知られています。

 本研究では、既存のメタアナリシスの解析手法を発展させて、外れ値に相当する研究が存在する場合にも、その影響を緩和して統合解析を可能とする解析手法を開発しました。この手法では、Density Power Divergenceという外れ値に頑健な尺度に基づいてエビデンスの統合を行います。また、シミュレーション実験を実施して、開発した解析手法が有効であることを検証しました。

 本研究の成果は、解析プログラムも含めて、国際学術誌で発表を行う予定です。開発した解析手法は、診断法のエビデンス統合を行う研究において、より信頼性の高い結論の導出に貢献することが期待されます。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2025/10/04
Date of Return: 2025/12/20

国、都市等

ドイツ、フライブルク

機関名、受入先、会議名等

Institute of Medical Biometry and Statistics

‍派遣中に学んだことや得られたもの

 専門分野の第一線で活躍する研究者の方々と議論することができ、大変良い刺激を受けました。海外に長期滞在して働くのは初めての経験でしたが、日本の研究コミュニティと共通する部分もあれば、異なる部分も多くありました。特に、人的ネットワークの豊富さについては大きな違いを感じました。本派遣で学んだことは、今後の研究活動に還元したいと思います。

統計科学コース 佐々木光太郎

 科学的な推論と良い意思決定をする方法、そのための道具としての統計学に関心があります。医療統計学と呼ばれる分野を専門としており、メタアナリシスの方法論などを研究しています。

PAGE TOP