2026.03.02
先史・古代準構造船の研究
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025
宮原千波
私自身もチョウナ(横斧)を持って作業に参加しながら、船づくりの調査を行いました。
船は、はるか昔から人々の生活を支えてきました。日本列島では2000年以上前に、丸木舟の両側に板を付けて積載量や安定性を高めた「準構造船」が登場し、国内外で人やモノ、文化が盛んに交流した古代の日本列島や朝鮮半島の水上移動を支えたと考えられています。しかし遺跡から出土するのは船の破片ばかりで、当時の船の姿や造り方は十分に分かっていませんでした。本研究では、こうした準構造船がどのような構造を持ち、どのように作られ、またどのように使われていたのかを多角的に明らかにすることを目的としています。これまでの研究では、まず全国各地の遺跡から出土した船材を調査しました。さらに、現在も伝統的な木造船づくりを行うパプアニューギニア・ミルンベイ州で現地調査を行い、人々の生活の中に船づくりがどのように位置づけられているのか調査しました。
その結果、日本列島の準構造船は従来指摘されてきた型に収まらず、集落の立地や用途に応じて多様な構造が使い分けられていたことがわかりました。その他にも、フィールドワークを通して木造船のある構造が、船としての機能だけでなく船づくりの工程においても重要な役割を果たしていた可能性を見出しました。
準構造船の変化は、当時の社会のニーズを反映しているといえます。そのため、本研究は船という視点から人類の移動や交流の歴史を捉え直す試みです。海や川、湖とともに生きてきた人々の知恵を明らかにすることは、過去を知るだけでなく、人類と海とのかかわりについて再考するきっかけにもなると考えています。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2025/10/19
Date of Return: 2026/1/13
国、都市等
パプアニューギニア・ミルンベイ州 ルイジアード群島パナエティ島
機関名、受入先、会議名等
Papua New Guinea National Museum and Art Gallery
派遣中に学んだことや得られたもの
ミルンベイ州では、日本列島の準構造船と一部共通した船体構造をもつ木造船を現在も製作しており、さらにそれが島嶼部の人々の暮らしを根底から支えています。はじめは島の人々が伝統的な工具で木材をどのように加工しているのかについて興味を持っていましたが、フィールドでの生活を続ける中で、たくさんの人々と長期間協働する必要がある木造船製作の現場マネジメントの在り方や、カヌーのオーナーとしての振る舞いの在り方など、興味深い知見を得ることができました。
人類文化研究コース 宮原千波
総合研究大学院大学人類文化研究コース博士後期課程で日本列島の先史・古代準構造船の研究をしています。もともと大学学部時代にカヌースプリントという競技に取り組んでおり、船に興味を持ちました。修士課程時代にはドラゴンボートという競技の日本代表として世界大会に出場したこともあり、船を漕ぐのが大好きです。最近はパプアニューギニアでの調査の際にセーリングカヌーで200㎞ほど旅をしたり、帆船「みらいへ」に乗船して喜界島から大阪まで航海したりと、船と名の付くものには目がありません。