2026.08.05
AIを用いて複雑な深宇宙探査の「軌道設計」を自動化・高速化する
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2026
畠山祥
AIが出発地と目的地の情報から大まかな軌道候補を瞬時に予測し、それを元に物理ベースの最適化を行うことで、計算時間を大幅に短縮します。
月や火星などを目指す深宇宙探査では、地球だけでなく月や太陽など複数の天体の重力が複雑に影響し合うため、探査機の飛行ルート(軌道)の計算が非常に困難です。従来の手法では、専門家の知識と膨大な計算時間が必要であり、これが新たな宇宙ミッションを計画する上での大きな障壁となっていました。そこで私は、この複雑な軌道設計を、機械学習を用いて自動化し、高速に計算する手法の研究を行っています。
本研究では、文章生成などで使われる「Transformer」という技術を応用し、出発地と目的地と飛行時間の情報を入力するだけで、宇宙機の複雑な軌道を予測する新しいサロゲートモデルを開発しました。さらに、モデルが非現実的なルートを描かないよう、重力の法則などの「物理のルール」を学習に組み込んでいます。このモデルが瞬時に導き出した有望なルートの候補を元に最終的な最適化計算を行うことで、従来の手法よりもはるかに高速かつ高精度に軌道を設計することを実現しています。
この研究が進展すれば、これまで多大な労力と時間を要していた深宇宙ミッションの初期軌道設計が、わずかな時間で実行できるようになります。専門家の負担を減らすだけでなく、より安全で効率的な宇宙探査計画の立案が可能になります。今後は、さらに複雑なミッションや多様な天体探査へ適用できるよう、モデルの改良を進めていく予定です。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2026/04/28
Date of Return: 2026/07/07
国、都市等
アメリカ合衆国、カリフォルニア州スタンフォード
機関名、受入先、会議名等
スタンフォード大学(Safe and Intelligent Autonomy Lab)
派遣中に学んだことや得られたもの
スタンフォード大学での研究滞在を通じ、世界最高峰のアカデミアにおける白熱した議論と、高い学術水準を維持する研究姿勢を体感しました。軌道制御やドローンの自律システムに加え、AIの先進的な応用について異分野の研究者と深く議論することで、新たな研究の着想を得ました。また、NASAや民間ディープテック企業のエコシステムを肌で感じたことで、自身の研究基準と視野を国際レベルへと大きく引き上げる貴重な契機となりました。
宇宙科学コース 畠山祥
1999年富山県生まれ。早稲田大学大学院にて機械科学・航空宇宙専攻修士課程を修了後、2024年より総合研究大学院大学博士後期課程へ進学。JAXA宇宙科学研究所にて、深宇宙探査に向けた軌道設計の研究に従事しています。また、学術研究と並行し、学部生より領域の異なる4つの企業を創業し、研究と社会実装の両輪で社会に貢献することを目指しています。 総研大特別研究員。