2020.04.15

新型コロナウィルス感染症に対する学長メッセージ

在学生の皆様へ、新型コロナウィルス感染症に対する学長メッセージ

新型コロナウィルスの感染拡大の深刻な状況が続いています。本学では、3月 24 日に予定されていた学位記授与式も、4月 7 日に予定されていた入学式も中止といたしましたが、これらの式典を心待ちにしていた誰にとっても、本当に残念なことでした。

さて、4月 7 日には、7都府県において緊急事態宣言がなされ、外出の自粛が求められています。この7都府県には、本学の専攻のおよそ半分が置かれており、現在、多くの院生が自宅待機を求められています。いつ終息するのか、先行きが不透明な中で、研究室に行かれない、実験ができない、観測ができない、海外派遣プログラムでの渡航ができないなどなど、思うように研究が進まず、やりきれない思いでいられることでしょう。みなさんのあせりと不満は、よくわかります。

新奇な病原体による感染というのは、人類の歴史においてこれまでに何度も生じてきました。スペイン人によるアステカ征服のあとや、ヨーロッパにおけるペストの蔓延のときもそうでしたが、広い地域で大規模な感染が起こると、そのあと、一つの文明が崩壊したり、文明の方向が変わったりもしました。

その中でも、今起こっている、新型コロナウィルスのパンデミックは、これまでにない新たな状況の中で起こっていると思います。まず、世界の人口が 80 億に近いというほど、人間の数が多いこと、その世界人口の 53 %が、人が密集する都市部に住んでいること、そして、航空機・鉄道・自動車などの輸送手段が発達し、人々の移動がこれまでにないほど活発であることです。また、世界の政治経済がグローバル化し、ある一つの国だけで有効な対処ができることはあり得ません。そして、ただでさえ、不確定な要素が多い中、 SNS を初めとする情報環境の激変により、真実が的確に伝えられるとは限らないということもあります。

いずれにせよ、今は世界的な危機状況です。研究の進め方については、先生方と相談の上で、出来ることをいろいろと工夫してください。東北の地震と津波の災害のときもそうでしたが、危機に対処するには、日常とは異なる思考が必要になります。わからないことがたくさんありますし、初めての対処ですから、試行錯誤しながら、それらの結果をみすえて、臨機応変に計画を変えていくことも必要です。そういった経験をもとに、今後のための知恵を築いてください。

世界中の誰もがそのように考えねばならないのですが、とくに学問の世界に身を置く人間として、冷静に事態を把握し、分析し、何が大事なのかを論理的に考えて下さい。そして、ユーモアのセンスを忘れずに、みなさんがこの危機を乗り越え、さらに強靭な精神を育んでいただくことを望んでいます。

総合研究大学院大学 学長
長谷川眞理子

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