2020.09.18

令和2年度秋季学位記授与 学長メッセージ【令和2年9月】

2020年秋学位記授与式 祝辞

本日、博士の学位を授与されましたみなさま、本当におめでとうございます。総研大に入学して以来の数年間にわたり、みなさんは研究を続けてこられました。そして、その成果を博士論文にまとめ、所定の単位を取得し、最終試験に合格して、本日の学位記授与式を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。

ところが、 COVID-19 の世界的な感染拡大により、いつものように総研大の葉山本部にお集まりいただき、学位記授与式を行うことができません。私の祝辞も、こうしてオンラインの配信ということになり、とても残念です。一人一人のお名前をお呼びし、学位記を手渡すことは、私にとって大変に重要なことでした。みなさんが所属する専攻は、日本のあちこちに散らばっていますので、普段お会いする機会はほとんどありません。みなさんも、他の専攻の人たちと話をする機会は少ないでしょう。ですから、たとえ短い時間ではあれ、葉山に集まってみなさんと共に、これまでの苦労を思い出し、学位取得後のこれからの人生に夢を馳せる、そんな時を持つことは、本当に貴重なのです。

さて、本日からみなさんは「博士」と呼ばれるようになるのですが、みなさんにとっての博士号の意味を、より深くふりかえってみてください。この数年にわたって研究を続け、博士論文を書き上げたことにより、みなさんは、以前と比べてどんな能力を身につけたでしょうか? ある特定の研究分野で専門家になったことは確かでしょう。でも、それ以上に、博士課程を修了して博士論文を書き上げたことによって、みなさんは人間的にどのように成長したでしょうか? 実験したり論文をまとめたりしている間は、そのように、自分を客観的に見る余裕はなかったかもしれません。しかし、博士号の意味を自覚することは、これからの先の人生で、とても大切なことだと思います。

これから先、みなさんの多くは、学問の世界で研究を続けていかれるでしょう。これまでと同じ分野で研究を続けることもあるでしょうが、少し違う分野に進むこともあるでしょう。また、学問とは異なる職場で、新たな人生を歩むことになる人もいるでしょう。いずれにせよ、自分が研究してきた分野で論文を仕上げたということは、その分野の知識のみならず、何か新しい能力が自分に付け加わったはずです。その力を良き道具として、これからの人生を切り開いていってください。

研究者になるにしても、それ以外の職業につくにしても、博士号取得者というものは、目の前の事柄だけでなく、時間的にも空間的にも広く全体を俯瞰する視点を持てる人だと思います。そして、何が問題かを発見し、その問題を解決するにはどのような方法を取るのが良いのか、その計画が建てられる人だと思います。また、事態に対する様々な意見や評価をそのまま受け入れるのではなく、批判的に検討し、自分の意見や立場も、相対化して見ることができるのだと思います。もちろん、みなさんはまだ博士号を取得したばかりなのですから、これらの能力が十分にあるわけではないでしょう。それでも、少なくとも、そのような能力の萌芽は身につけているはずです。それらを自覚しながら、さらに磨きをかけていってください。

そして、大切なのは、友人たち、仲間たちです。同じ専攻の仲間たち、先輩や後輩、学会で知り合った人たち、専攻は違っても、さまざまな機会で知り合った人たち。みなさんがこれまでに築きあげてきた友人たちや仲間たちのネットワークは、これからの生活でとても重要になる財産です。学問のことも、人生の様々な困難についても、相談し合い、助け合うことのできる仲間がいることは素晴らしいことです。このような社会的なネットワークは、困った時のセイフティネットでもあり、貴重な情報源でもありますが、何よりも、人生を豊かにしてくれる源泉です。

COVID-19 のせいで、なかなか先の見通せない世の中になりました。オンラインでする仕事が増え、オンラインの良いところも悪いところも、今、世界中でみんなが学んでいる最中のようです。私たちがこれまで築いてきた文明のあり方そのものも、見直されていくのかもしれません。みなさんは、これから先、どこへ行って、どんな仕事をすることになろうと、学問とは何かということがわかっている人間として、より良い社会を作るために、貢献してくださることを望みます。

最後になりましたが、指導教員の先生方、ご家族のみなさまなど、これまでのみなさんの研究生活を支えてくださった多くの方々にも、お祝いと共にお礼を申し上げたいと思います。本日は、本当におめでとうございます。

総合研究大学院大学 学長

長谷川眞理子

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