2024.12.24
【プレスリリース】スズを含むペロブスカイト半導体の界面構造制御法の開発とメカニズム解明〜高性能多接合(タンデム)型太陽電池の実現〜
概要
京都大学化学研究所の若宮 淳志 教授(iCeMS連携PI)、Shuaifeng Hu 博士後期課程(研究当時、現:オックスフォード大 博士研究員)、Minh Anh Truong 助教らの研究グループは、オックスフォード大学のHenry J. Snaith 教授、Junke Wang 博士、自然科学研究機構分子科学研究所のPei Zhao 特任助教、江原 正博 教授(総合研究大学院大学)、理化学研究所の中野 恭兵 博士、但馬 敬介 博士らとの共同研究成果として、スズを含むSn-Pb系ペロブスカイト半導体の界面構造制御法を開発し、これをボトムセルとして用いることで、オールペロブスカイトのタンデム型太陽電池(用語解説1)の高性能化を実現しました。
独自の添加剤として、アミノ酸基とカルボン酸基を分子内に併せもつフェニルアラニン(用語解説2)をSn-Pb系ペロブスカイト半導体の前駆体溶液に用いることで、高品質なSn-Pb系ペロブスカイト半導体膜が作製できる手法を開発しました。各種分光測定の結果と理論計算により、塗布成膜過程でのフェニルアラニンがどのようにペロブスカイトの構成イオンと相互作用し、埋もれたペロブスカイトの下層の界面を選択的に構造制御するのかについて、化学的な視点からそのメカニズムの詳細を解明しました。この手法で得られた高品質なSn-Pb系ペロブスカイト層を用いて作製した、単接合セル、2接合型タンデムセル、および3接合型タンデムセルの各デバイスでは、それぞれ0.91 V、2.22 V、および3.46 Vの開放電圧が得られ、23.9%、29.7%(認証値 29.26%)、および28.7%の光電変換効率を達成しました。また、1 cm2のサイズの3接合デバイスでも、28.4%(産業技術総合研究所(AIST)にて27.28%の認証値)の光電変換特性を得ることができました。さらに本研究では、初めて4接合型のペロブスカイトタンデム型デバイスまで作製し、4.94 Vもの高い開放電圧と27.9%の光電変換特性が得られることを実証しました。
本研究成果は、2024年12月23日(現地時刻16:00 pm)に「Nature」にオンライン掲載されました。
詳細については、京都大学のプレス発表を参考にしてください。
用語解説
用語解説 1) タンデム型太陽電池
異なるバンドギャップ(吸収する光の波長)をもつ2つ以上の太陽電池を直列に並べて、太陽光エネルギーをより高い効率で電気エネルギーに変換できるようにした太陽電池。
短い波長領域の材料にペロブスカイト太陽電池をトップセルとして用いて、長い波長領域の材料にシリコンやCIGS、有機薄膜太陽電池(OPV)、ペロブスカイト太陽電池などをボトムセルとして用いたものなどが知られている。このうち、ボトムセルにもペロブスカイト太陽電池を用いたものは、オールペロブスカイトタンデム型太陽電池と呼ばれる。
用語解説 2) フェニルアラニン
側鎖にベンジル基をもつアミノ酸の1種。
研究プロジェクトについて
本研究は以下の支援により遂行されました。JST-未来社会創造事業(JPMJMI22E2)、日本学術振興会科学研究費(JP21H04699, JP24H00481, JP22H05133, JP24K17663, JP24K01571)
論文タイトルと著者
研究に関するお問い合わせ先
若宮 淳志(わかみや あつし)
京都大学化学研究所・教授
TEL:0774-38-3080 FAX:0774-38-3084
E-mail:wakamiya@scl.kyoto-u.ac.jp
報道に関するお問い合わせ先
- 京都大学 渉外・産官学連携部広報課国際広報室
TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094
E-mail:comms_at_mail2.adm.kyoto-u.ac.jp(_at_は@に変換してください。) - 自然科学研究機構・分子科学研究所研究力強化戦略室広報担当
TEL:0564-55-7209 FAX:0564-55-7340
E-mail:press_at_ims.ac.jp(_at_は@に変換してください。) - 総合研究大学院大学 総合企画課 広報社会連携係
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