2026.06.01
常に多細胞性が不利である変動環境下でも多細胞性は進化するか?
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2025
中野来喜
○は細胞を表し、色付きの○はコロニー分裂後の細胞を表します。各クラスターの細胞には、集まっている細胞数に応じて細胞増殖率が割り振られています。このモデルでは様々な分裂様式を扱えます。
進化史において単細胞生物から多細胞生物への進化は、より複雑な機能を持つ動植物・菌類などへの進化を可能にしたとして、主要なイベントであるとされています。進化論的に考えると、多細胞生物が進化するのは多細胞であることが生物にとって有利となる時です。しかし、多細胞であることが常に不利である場合でも、多細胞生物が進化することがあるでしょうか。我々は、その可能性を数理モデルによって調べました。
多細胞生物は、様々な増殖・分裂のパターンがあります。例えば、ブドウ球菌は、ブドウ状の細胞塊から1つの細胞が遊離し、ふたたびブドウ状細胞クラスターを形成するまで増殖します。我々の数理モデルは、考えうる限りの分裂パターンを再現できるものです。このモデルでは、細胞数の異なるクラスターには異なる細胞増殖率があると仮定していて、この増殖率と分裂パターンにより、最終的な集団全体の増殖率が計算されます。このモデルを使い、単細胞と多細胞、どちらの分裂パターンがもっとも集団の増殖率が大きくなるか、つまりどちらが進化するかを調べました。変動環境に関しては、細胞増殖率が異なる2つの季節を組み合わせたものを考えました。
我々が解析した環境条件は、単細胞の進化を促進する季節を2つ組み合わせた場合です。このとき、多細胞性は進化しうるでしょうか。また、どのようなクラスターの分裂パターンが進化によって選ばれるのでしょうか。これらの問いを理論的に解明することを目指しています。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2025/12/4
Date of Return: 2026/2/28
国、都市等
ドイツ(Plön)
機関名、受入先、会議名等
Max Planck Institute for Evolutionary Biology
派遣中に学んだことや得られたもの
派遣先で共同研究を行なったDr. Yuriy Pichuginは長年、多細胞進化の理論研究を行っています。暖かく迎え入れていただき、ほぼ毎日、計算結果と共にディスカッションすることで、多細胞進化の理論に関する理解を得ました。また、いくつか研究成果も上げることができました。
今回滞在した、Max Planck Institute for Evolutionary biologyには、著名な数理生物学者であるArne Traulsenをはじめ、多くの数理生物学者が在籍しています。毎週開催される研究ミーティングに参加し、また、個人的に研究の話をすることによって、数理生物学の知見が広がりました。
統合進化科学コース 中野来喜
私(左)と共同研究者のDr. Pichugin (右)