2025.06.24

【プレスリリース】MegaMove: バイオロギングで大型海洋動物111種を追跡調査

Sequiera et al. (渡辺 佑基 1 、 高橋 晃周 2 を含む著者377名)
1 総合研究大学院大学 統合進化科学研究センター
2 情報・システム研究機構 国立極地研究所/総合研究大学院大学 極域科学コース

研究概要

 海洋生物の多様性を守るため、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では2030年までに海の30%以上を海洋保護区等として保全する目標が定められています。しかし、これがどれほど効果的なのか、またどの海域を優先的に保護すればいいのかを知ることは容易でありません。そこで、著者らは大規模な国際プロジェクト「MegaMove」を立ち上げ、大型海洋動物(サメ類、鯨類、アザラシ類、海鳥類、ウミガメ類等)の移動経路に関するデータを集めました。計377名の研究者が参画し、動物の体に機器を取り付けるバイオロギングの手法で計測したデータを持ち寄りました。それをもとに、移動性の高い大型海洋動物にとって重要な海域を特定し、保全策を検討しました。

研究の成果

 世界の海洋面積の72%を網羅する大型海洋動物の移動経路データ(計111種)が集まりました(図1)。統計解析を行い、複数種が繁殖、食事、休息の場や回遊経路として使う重要な海域を特定しました。それらの海域の多くは、漁業、船舶の往来、海水温上昇、海洋プラスチック汚染などの影響が顕著な海域と重なっていました。「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の30%の目標が達成できたとしても、大型海洋動物にとって重要な海域の40%程度をカバーするに過ぎず、残りの60%は人為活動の危険にさらされることが示唆されました。そのため、現在の目標だけでは不十分であり、より複合的な保全策の実践が必要であると考えられました。

今後の展開

 本研究により、バイオロギングによって集められた大型海洋動物の移動経路データを保全策に役立てる枠組みが示されました。しかし、本研究のような世界規模の解析では、海域や国によって異なる環境や実態の違いを必ずしも反映できません。今後は、バイオロギングのデータを活用し、よりローカルなレベルで大型海洋動物の保全に向けた取り組みが進められることが期待されます。

(図1)本研究で集められた大型海洋動物の移動経路データ
(Aは全てのデータ、Bは分類群ごとにまとめたもの)。

著者情報

  • Ana Sequeira (オーストラリア国立大学・准教授)
  • 渡辺 佑基 (総合研究大学院大学 統合進化科学研究センター・教授)
  • 高橋 晃周 (情報・システム研究機構 国立極地研究所/総合研究大学院大学 極域科学コース・教授)
    ほか、377名

論文情報

  • 論文タイトル: Global tracking of marine megafauna space use reveals how to achieve conservation targets
  • 掲載誌: Science
  • 掲載日: 2025年6月6日(金)
  • DOI: 10.1126/science.adl0239

問合せ先

    研究内容に関すること

  • 渡辺 佑基(総合研究大学院大学 統合進化科学研究センター・教授)
    電話:046-858-1504
    電子メール:watanabe_yuuki@soken.ac.jp
  • 高橋 晃周(情報・システム研究機構 国立極地研究所/総合研究大学院大学 極域科学コース・教授)
    電話:042-512-0741
    電子メール:atak@nipr.ac.jp

    報道担当

  • 国立大学法人 総合研究大学院大学
    総合企画課 広報社会連携係
    電話:046-858-1629
    電子メール:kouhou1@ml.soken.ac.jp
  • 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所
    運営企画本部 広報室
    電話:042-512-0655
    電子メール:koho@nipr.ac.jp

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