2011 JSPSサマー プログラム

『JSPSサマー・プログラム オリエンテーション』が開催されました

本年は震災の影響にもかかわらず、アメリカ合衆国、英国、フランス、ドイツ及びカナダの5か国の博士号取得前後の若手研究者(フェロー)99名が来日し、平成23年6月15日(水)、『JSPSサマー・プログラム』が幕を開けました。

2011 JSPSサマー プログラム

第1日目、_畑学長の挨拶で始まった開講式。(独)日本学術振興会及び海外協力機関の米国国立科学財団(アメリカ合衆国)、ブリティッシュカウンシル(英国)、フランス国立科学研究センター(フランス)、ドイツ学術交流会(ドイツ)、カナダ大使館(カナダ)の方々も出席されました。夜の歓迎レセプションでは、鮪の頭にカメラを向け日本食を満喫するフェローを見かけたり、受入教員と対面し話に夢中になるフェローがいたり、総研大レクチャーの参加者と交流したり、多研究分野・多国籍のフェロー同士の国際交流が活発に始まりました。

『JSPSサマー・プログラム オリエンテーション』が開催されました

第2日目は宇宙科学専攻の山田哲哉先生により「Dawn of the age of the solar system exploration-Hayabusa, Ikaros and future-」の タイトルでおよそ1時間20分間熱のこもった講義が展開されました。特に、「はやぶさ」を積んだロケットの発射シーンや、衛星イトカワからどのようにしてサンプルを採集したかについて、また着地したサンプルカプセルを回収するプロセス等が、ビデオで紹介された他、全体が「はやぶさ」のプロジェクトの時間の流れに沿って説明されたので臨場感が伝わってきました。そのほか、イカロスの帆がいかに大きいかや、今後の宇宙科学の展開について等のお話もあり、大変興味深いものとなりました。講演後フェローとの間で活発な質疑応答が展開されました。また、講演後の拍手が長くなり続けていたのも、印象的で、本講演へのフェローの関心の高さを示しているものと思われます。

山田先生につづいて、東京藝術大学安藤政輝先生の講演及び筝・尺八の邦楽演奏がありました。
最初に、安藤先生から日本の伝統楽器についての講演がありました。箏、尺八、三味線についてお話いただきました。箏については、その構造や、古典的な和楽の音階、箏のひき方の基本について等のお話がありました。このお話を受けて、八橋検校作の「六段の調べ」が演奏されました。その後、尺八の種類や、音色についての説明があり、様々な音色を含む「鹿の遠音」という曲目が披露されました。さらに、箏、三味線、尺八の3種の楽器により、「残月」という曲目が演奏されました。20分の休憩を挟んで、箏と三味線による「水の変態」、箏と尺八による「春の海」が演奏されました。そして最後に安藤先生と二人の学生による、3面の箏による合奏で「さくら変奏曲」が披露されました。このなかでは、17弦の箏も使っていました。17弦の箏は一般の13弦のものよりひとまわり大きく、奏でられる音にも重厚さがあります。この変奏曲の安藤先生の奏でる箏から伝わってくる調べは、ハラハラとまい落ちる桜の花びらを想像させる様な響きでした。演奏後の拍手は再び、なかなか鳴り止まず、フェローたちの感動がよく伝わってきました。質疑応答の後、フェローが直に楽器に触れ、音を出してみる機会が提供され、檀上に用意された箏や三味線に触れてみたいというフェローが長い列を作りました。

また、3日間の日本語教育に果敢に取り組み、日本文化紹介(茶道・書道・折り紙・着付け)では、振袖に身を包んだフェローがお茶をたしなむ姿がひときわ目を引き、総研大生も加わったポスターセッションでは、研究内容について活発な意見交換が飛び交いました。週末には、日本人家族宅でホームスティを体験し、箱根の温泉、鎌倉の大仏見学、魚釣りなど、素晴らしい思い出を作り、帰着時にはホストファミリーとの別れに涙を見せる姿も印象的でした。

最終日に行われた特別講義は、日本文学の歴史と、日本における科学(遺伝学)の発展についてでした。日本文学研究専攻の古瀬蔵先生には、「Introduction of classical Japanese Literature by an information Scientist」のタイトルで講義いただきました。非常にユーモアあふれる話し振りに、フェローも和やかな雰囲気で講義を聴いていました。日本文学の歴史は大きく4つの時期に区切られること、各時期に主流となる文学スタイルがあること等が紹介されました。源氏物語については、日本文化を紹介するビデオを提示していただき、美しい映像も目を引いていました。また、和歌にもとづく、百人一首や、カルタ等についての説明もあり、特に、百人一首の大会の映像にはフェロー達が驚いている様子が伝わってきました。他に、歌舞伎や文楽のビデオでの解説もありました。講義中特に、百人一首を読み上げて、下の句を当てるゲームが行われました。日本語授業で「ひらがな」を学んだフェローは楽しんでいました。

最後に、生命共生体進化学専攻の飯田香穂里先生は「International connections and the development of science in Japan」というタイトルでお話しいただきました。講演は、江戸時代の社会情勢や日本独自の文化、外国との関わり方にはじまり、明治になってからの暦や、時間の概念が変わったことが、西洋の文化や産業技術の発展と深い関わりがあったことや、日本での生糸産業の隆盛など、日本と諸外国との関わりを紹介されました。その後、「木原均」という日本の小麦を用いた遺伝学、ゲノム解析の創始者とも呼べる遺伝学者の活躍を、特に外国の研究者との関わりのなかで紹介されました。国際学会への加入や、論文執筆についてのトピックス。そして戦中、戦後の混乱期にどのように外国の研究者との絆を再構築していったかという話でした。最後に、コミュニケーションは今はやりのバーチャルではなく、face to faceのコミュニケーションが大切であり、このJSPSプログラムで出会ったこの機会を大切にして欲しいというメッセージで結ばれました。

平成23年6月21日(火)99名のフェローは東北地方も含め全国各地の受入機関へ向け旅立ちました。この困難の時期に来日した若者達に敬意を表すと共に、それぞれの機関でこの2ヶ月素晴らしい研究活動を繰り広げ、彼らのエネルギーが日本の復興の一助になることを祈念します。

『JSPSサマー・プログラム 報告会・送別会』が開催されました

『JSPSサマー・プログラム 報告会・送別会』が開催されました

8月23日、ホテルグランドパレスで行われた報告会では、各国の学術機関から選ばれた6名の代表者による研究発表が報告され、活発な質疑応答が行われました。本学で受入れたLucie GATTEPAILLEさんはCNRS代表として集団遺伝生物学の研究について発表すると共に、ソフトボール大会や素麺流しの写真など本学で過ごした2ヶ月間を楽しく話してくれ、修了証書授与時には、彼女の目にうっすらと涙が浮かんでいました。

また、その後行われた送別会には、受入研究者やホストファミリーが参加し、日本滞在をしめくくるのにふさわしい盛大な会となりました。

今回のサマー・プログラムで本学及び基盤機関に配属されたフェロー達から感想を寄せてもらいました。

William MCLAMB (NSF:総研大 生命科学研究科/フロリダ工科大学 生理学、細胞生物学)

"About the laboratory in Japan"
日本の受入機関は電気生理学室など、フロリダ工科大学にはないリソースがあり、大変貴重な経験をすることができました。

"About Orientation program"
オリエンテーション・プログラムは、日本に滞在し研究を始めるのに適応できるよう、ちょうど良い助けとなりました。日本語の授業では、コミュニケーションの基礎や礼儀を教えてくれました。特別講義は大変興味深いものでしたが、大規模な講義形式ではなく、小さいグループ毎のワークショップ形式の方がより効果的ではないかと思います。また、ポスター・プレゼンテーションを行う時期はオリエンテーションではなく、2ヶ月間の研究終了時に行った方が、他の学生達と研究成果を共有できるのではないかと思います。

Kevin BULLAUGHEY(NSF:総研大 先導科学研究科/シカゴ大学 進化生物学)

Kevin BULLAUGHEY(NSF:総研大 先導科学研究科/シカゴ大学 進化生物学)

"About your research through Summer Program"
日本での研究は大変実りあるものでした。新しいプロジェクトを始めたり、研究室員や指導教員と科学について意見交換する良い機会にもなりました。

"About favorite experience"
私にとって一番貴重な体験は、国立遺伝学研究所訪問時に太田朋子名誉教授にお目にかかれたことです。教授は、私の研究分野では巨匠といわれる卓越した研究者で、木村教授と長い間共同研究をされました。

Lucie GATTEPAILLE (CNRS:総研大 先導科学研究科/ウプサラ大学 集団遺伝生物学)

Lucie GATTEPAILLE (CNRS:総研大 先導科学研究科/ウプサラ大学 集団遺伝生物学)

"About Orientation program"
日本語の授業は、昔勉強し錆び付いていた私の日本語を再認識させてくれる良い機会となりました。日本文化紹介もとても楽しかったですが、とりわけ邦楽演奏に心を奪われました。その中でも箏は素晴らしく、3面の箏による合奏「さくら変奏曲」は純粋に感動しました。このような機会に恵まれ、私はとても幸運だと思います。また、オリエンテーションが行われた場所も良かったです。(門限がありましたが、食事は美味しかったです。)

Erica ANDERSON (NSF:総研大 生命科学研究科/フロリダ大学 環境科学)

"About your research through Summer Program"
私の研究はとても上手く行きました。貴重なデータを収集でき、新しい技術も学ぶことができました。一番良かったことは、私の研究している種の処理を最適化した方から直接、多少複雑な技術を学ぶことができた点です。全体的には、この短期間でかなりの研究を成し遂げることができ大満足です。

"About Home stay program"
日本人の一般的な家庭に滞在できたのは、素晴らしい経験でしたし、このような貴重な機会に恵まれて大変光栄です。ホームスティー・プログラムは日本の生活について多くの事を学べる最適な方法だと思います。私のホストファミリーは、大変フレンドリーでとても楽しい週末を過ごさせてもらいました。

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