2018 JSPSサマー プログラム

「JSPSサマー・プログラム2018」 オリエンテーションを開催

<期間>2018年6月13日(水)~2018年6月19日(火)

2018年6月13日(水)から7日間、『平成30年度JSPSサマー・プログラム』のオリエンテーションを湘南国際村センター(葉山)にて実施しました。各国の学術機関による選抜を経て、英国、フランス、ドイツ、カナダ、スウェーデン及びアメリカ合衆国の6カ国から博士号取得前後の若手外国人研究者(フェロー)102名が来日し、それぞれの受入研究機関に向かうまでの1週間を葉山にて過ごしました。

開講式は、日本学術振興会の牛尾理事及び本学の長谷川学長の歓迎の挨拶で始まり、推薦機関からも多くの関係者が出席されました。夜の歓迎レセプションでは、日本での受入教員、本学教員や学生達も歓談に加わり、分野や国籍を超えた交流が活発に行われ盛大な会となりました。

2日目は、山本嘉孝講師(大阪大学)による"Paper And Threads: My Encounter with Early Modern Japanese Books(紙と糸:日本古典籍との出会い)"と題した特別講義で始まりました。その多くが現代文字に訳されていないという日本古典籍について、歴史背景と製本方法、構成、また具体的な内容に至るまで、ひとつずつ解説がなされ、ご自身の進路を決めるきっかけ等にも触れながら講義が進められました。質疑応答では、翻訳率の低さと日本人の文学に対する関心の関係性について、文学と科学のコラボレーションの可能性について等、次々と質問の手が挙がり、フェローの関心の高さを伺うことができました。

開講式での集合写真
山本先生による特別講義の様子
山本先生による特別講義の様子

午後からは、代表的観光スポットである鎌倉の鶴岡八幡宮、鎌倉高徳院(大仏)、小町通りを訪れました。ツアーガイドの歴史的説明を熱心に聞きながら、お参りの仕方やお賽銭の投げ方についても興味深く見学し、「武家の古都」鎌倉の魅力を存分に満喫しました。 また、この日から計3日間、これから始まる2ヶ月間の研究生活の準備として、日本語授業が行われました。日本語の基礎からロールプレイング形式での実践的な会話まで、フェローのレベルにあわせた10クラスに分かれ、意欲的に取り組んでいました。

3日目午前中に行われたポスター・プレゼンテーションでは、フェローが来日前に各自用意したポスターを会議場に並べ、日本での研究計画についてプレゼンテーションが行われました。総研大生と教職員も加わり、それぞれの研究分野を越えた活発な議論が行われました。

ポスター・プレゼンテーション
ポスター・プレゼンテーション
習字に取り組むフェロー
習字に取り組むフェロー

夕方から行われた日本文化紹介では、茶道、書道、折り紙、けん玉、着付けを体験しました。けん玉コーナーでは、物理の法則を用いて真剣に挑戦するフェローの姿や、浴衣の着付けでは、色鮮やかな涼しい装いとなり、日本文化の魅力を楽しみました。

長谷川学長による特別講義
長谷川学長による特別講義

週末は、日本家庭でホームステイを体験し、プリクラ、回転寿司やラーメン、手打ちうどん等、日本独特の文化・食文化を楽しみ素晴らしい思い出を作りました。ホストファミリーにより厚いおもてなしを受け、17日(日)夕方には皆が満喫した表情で、またホストファミリーとの別れを惜しみながら湘南国際村センターに戻ってきました。

18日(月)午前には、長谷川眞理子学長による特別講演 "Seven (Naive) Questions about AI(AIに関する7つの(ナイーブな)問い)"が行われました。人間の特異性、脳と知性の進化について触れたうえで、今後避けて通れない課題としてのAIに関する、7つの問題提起がなされました。フェローの中にはAIの研究者もいたため、長谷川学長から質問を投げかける場面もあり、対話に近い形で進められた質疑応答はとても興味深く、有意義な時間となりました。

午後には、元東京藝術大学教授の安藤政輝先生をお迎えして、"The World of Koto(琴の世界)"と題して特別講義が行われました。安藤先生から日本の伝統楽器についての講義があり、その後、尺八、三味線、十七弦の奏者3名も加わって邦楽演奏がなされました。途中、「六段の調べ」の演奏に合わせて、琴の形がルーツと言われる「聖護院八つ橋」が安藤先生からフェローに配られました。続けて行われたワークショップでは、檀上に用意された箏や三味線、尺八に触れてみたいというフェローが長蛇の列を作り、安藤先生と奏者の方々に教わりながら、初めての演奏体験を楽しみました。

今年は飛行機の遅延等により6名が途中参加となりましたが、ホームステイの前には全員が揃い、無事に1週間のオリエンテーションを終えて全国各地の受入機関に向けて旅立っていきました。2ヶ月の研究を経て、8月21日(火)に行われる報告会のため、次は東京に集まることとなります。彼らの研究生活が実りあるものとなり、このプログラムが日本と世界の学術交流に繋がっていくことを願ってやみません。

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「JSPSサマー・プログラム2018」 報告会・送別会を開催

<期間>2018年8月21日(火)

JSPSサマー・プログラムで6月に来日した、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、スウェーデン及びアメリカ合衆国の博士号取得前後の若手外国人研究者(フェロー)が、全国各地の大学・研究機関での2ヶ月間にわたる研究活動を終え、平成30年8月21日、東京九段下ホテルグランドパレスにて、その研究報告会が行われました。

報告会では、長谷川眞理子学長、家泰弘日本学術振興会理事の開会挨拶の後、各国の代表者6名から研究成果について、また本国と日本の研 究スタイルの違い、日本での文化交流について報告がありました。各発表後には参加者から多くの質問の手が挙がり、「自分の研究にも応用したいので是非連絡先を交換したい」というコメント等、さらなる交流の広がりを予感させる時間となりました。

送別会には、23名の受入研究者、6月のオリエンテーションにて特別講義の講師を務められた箏曲家の安藤政輝先生にご参加頂きました。送別会の途中、本プログラムの修了生であり、現在はJSPS外国人特別研究員として日本で研究を続けているDr. Kellerから日本での研究生活、JSPSの研究助成等に関するプレゼンテーションがあり、終盤にはフェロー達から集めた全国各地での研究活動の様子、文化体験等の写真が上映され、最後まで名残惜しく語り合いが続きました。

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JSPSサマー・プログラム期間中、受入研究機関を訪問した際にフェロー達から寄せられたコメントを紹介します。

Veronica WALLANGEN / 量子科学技術研究開発機構 / ストックホルム大学 / STINT

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プログラムのどのような面がよかったと思いますか?

研究分野の選択において自由度が高かったことです。また、研究活動だけでなく日本の文化にも触れることができて良かったと思います。

本国と日本の研究室で、何か違いはありますか?

日本の研究室の人達はとても熱心だと思いました。文化の異なる環境での研究活動はとても興味深かったです。

葉山でのオリエンテーションはどうでしたか?

とても良いスタートでした。日本語授業は研究活動でとても役立ちましたし、ホームステイも日本での生活を始めるにあたってよい導入であったと思います。

JSPSサマー・プログラムについて一言メッセージをお願いします

JSPSサマー・プログラムは、素晴らしい最先端の研究にふれ、一方で日本の文化やおもてなしを体験することができる、とてもバランスのよいプログラムです。プログラムへの参加をとお して、研究者として、また個人としても、他では得ることが出来ない豊かな経験を得ることができました。

Fred Ariel Hernandez / 筑波大学 /カリフォルニア大学ロサンゼルス校 / U.S.A

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本国と日本の研究室で、何か違いはありますか?

UCLA では人文科学(ジェンダー)に所属しているため、研究室もなく、筑波大学の環境とはとても異なります。様々な施設が利用でき、大学院生へのサポートも整っています。筑波大学は一言にスポーツ科学といっても、とても幅広い分野があるため、人文系にいながらスポーツを研究している私にとってはもってこいの場所です。

葉山でのオリエンテーションはどうでしたか?

プログラムの数、クオリティーの高さに驚きました。予想していた以上のもので、鎌倉観光はリラックスできてとても楽しかったです。日本語の授業はとても役に立ちました。もう少し時間がとれるのであれば、より実践的な、会話の要素を加えても良いと思います。

JSPSサマー・プログラムについて一言メッセージをお願いします

JSPSサマー・プログラムは素晴らしい研究と学びの機会でした。私の受入大学には幅広い分野の日本人、外国人研究者が所属していて、研究施設も素晴らしく、受入研究者の先生はとても積極的に関わり支援してくださいました。シンポジウムや学会等、大学や大学近郊で行なわれた専攻の交流にも参加させていただき、とても貴重な経験を積むことが出来ました。これは決して個人で実現出来るものではなく、本プログラムを通して行った研究の質にも直結するものです。この夏は、博士課程におけるハイライトとなりました。この貴重な機会を感謝します。

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