第10回(2016年9月9日)

Yasu通信

写真1)台風一過の葉山の海(2016年8月22日スマホ撮影)
基盤を固めて総研大から跳躍を!

Yasu通信 第10回(2016年9月9日)

今夏は特に蒸し暑くて寝苦しい日が続きましたが、総研大生の皆さんは有意義な時を過ごせたでしょうか?

まとまった形で学べる時間が与えられるということが、いかに大事で幸せなことかは、学生生活を終えたときに身に染みて気づくことになるでしょう。学部学生時代に他のことに打ち込んでいた人が勉学を取り返すことができるのも、勉強しまくっていた人が次元と視点を変えた学習ができるのも、大学院生の、特に時間的自由度の大きい夏休みの、時期ではないでしょうか。

総研大生は、少人数ずつ異なるキャンパスに別れているので、一人一人が孤立しがちです。しかし、少ないながらも周りに院生がいないわけではありませんし、フレッシュマンコースなどの全学事業や、リトリートなどの研究科やそれをまたぐ事業で知り合った同窓生もいますので、院生同士のつながりを持つことができるはずです。また、同じ研究室や近くの研究室の若手教員とのつながりを持つことも重要でしょう。身近な同輩や先輩から大きな影響を受けることは、後に非常に有益となることが多いのです。サイエンスは、ある意味で人と人とのつながりの結果であるとも言えるからです。

研究には、体力勝負とメンタル勝負という側面があります。これらはいずれも、勉学や研究そのものから培われるものではありません。その意味で、人と人とのつながりや、スポーツやリクリエーションや旅行や読書はとても重要です。多くの総研大生が学生生活を送られている基盤機関について、そのキャンパスに責任のある機関の長などの方々にお願い協力して、福利厚生・体育環境の向上を図っていかねばならないとも感じています。大学院生時代は、種々の意味で将来の研究職生活の基盤固めの時期にあるのですから。

研究には、ある課題について集中して取り組んで成果を上げる過程のみならず、それを論文や著作として表現・発表しきる過程が必ず次に伴われなければなりません。それらの過程には、共著であれ単著であれ、周りの多くの人々との遣り取り(討論・情報交流・共同研究)やそれらの人々からの支援・援助が不可欠であり、それらによって、より客観性や洗練性が付与されることになるのです。その上に、何か1つ諸君なりの「気持を込める」ことができれば、一味違った仕事になり、メッセージ性も高まることでしょうから、そのような余裕(これも基盤の1つ)も持てるように心がけてほしいと思います。

写真2)葉山キャンパス近くから見たダイヤモンド富士(2016年9月1日スマホ撮影)

ノーベル賞受賞者の大村智先生は、「若い連中に力をつけさせるには、レベルの高い人たちのなかにいれないと駄目だ。そして絶対にまねごとだけではいけない。」(注)と述べておられます。皆さんは、既に世界トップレベルの人たちや独創的な人たちが多くいる大学共同利用機関などの基盤機関で勉学するという非常に恵まれた環境にいます。その好条件を活用して、優れた研究者・研究関連職従事者として成長し、飛び立って下さい。皆さん一人一人の跳躍が総研大を高め、大学共同利用機関法人や各機関を強くし、わが国や世界の学術を守り育てることになるのです。私はそのためにできるかぎりのサポートをしたいと考えています。

皆さんの総研大からの跳躍を期待しています。

ではまた!

追:葉山は山も海(と海越しに見える富士山:写真1参照)も美しく、4月と9月の初旬にはダイヤモンド富士(写真2参照)を見ることもできますので、またたびたび訪れてください。

注)"私の履歴書⑥"(日本経済新聞2016年8月6日号)より。

写真1)台風一過の葉山の海(2016年8月22日夕 スマホ撮影)
写真2)葉山キャンパス近くの展望台から見たダイヤモンド富士(2016年9月1日夕 スマホ撮影)

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