総研大ジャーナル 第6号(2004年秋)

特集 核融合 未来へのシナリオ

太陽や星の中心部では、水素の原子核同士が融合し、より重い原子核になる「核融合」が起こっている。そのとき、質量の一部がエネルギーに変換され、これにより巨大なエネルギーが生み出される。これが太陽や星のエネルギー源だ。この反応を大規模に地上で起こすには、星の中心にも匹敵する超高温・高密度状態をつくり、そこに電子と原子核がばらばらになったプラズマ状態のガスを閉じ込めておく必要がある。その技術を開発し、未来のエネルギー源として利用するための研究が、さまざまなアプローチによって世界各国で行われてきた。その結果、この25年間でも、プラズマ閉じ込めの性能(温度・密度・閉じ込め時間の積)は10万倍になった。
日本でも、核融合科学研究所で建設した大型ヘリカル装置(LHD*1)は、電子・イオン温度1億2000万度を実現した。さらに、プラズマ中に電流を流す必要がないというヘリカル装置の利点を生かして、1時間以上の持続的な運転の実証をめざすなど、世界をリードする研究を進めている。プラズマ閉じ込めの性能をさらに上げ、実用化への道を開くには、より大型の実験装置が必要であり、現在、プラズマの自己点火をめざした国際熱核融合実験炉(ITER(イータ)*2)の計画が動きだしている。
核融合科学研究所は総研大の基盤機関の一つであり、最先端の研究と一体となった大学院教育が行われている。この特集では、核融合研究が切り開いてきた歴史をたどり、新しい学問領域の魅力を紹介するとともに、よりよいエネルギー源を開発するという社会的使命の中で研究と教育がどう進んでいるかを、第一線に立つ研究者たちに語ってもらった。

*1 LHD: Large Helical Deviceの略
*2 ITER: International Thermonuclear Experimental Reactorの略

総研大ジャーナル 第6号

特集 核融合 未来へのシナリオ

●Part1 核融合研究はここまできた

●Part2 核融合研の魅力

●Part3 核融合研究の明日を語る

●SOKENDAI総合研究

変貌する文化人類学

●Bファクトリーの最新レポート

●科学と社会

●大学院生に聞く 長倉研究奨励賞者

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