総研大ジャーナル 第11号(2007年春)

特集 極限宇宙への挑戦

本特集では、私たちが認識する「宇宙」の限界に挑む研究を紹介する。
ひとことに「宇宙」といっても、さまざまな対象が想起される。全体世界としての宇宙そのものの起源と進化を思う人もあれば、人工衛星を駆使したX線や赤外線による観測を思い浮かべる人も、また、太陽系を飛び越えて数多く発見されている系外惑星に興味をもつ人もいるにちがいない。さらに、地球磁気圏の研究から、普遍的な宇宙プラズマや超高エネルギー宇宙線に迫ろうとする試みに興味をもつ人も、ミクロ世界の素粒子から宇宙の成り立ちを究めようとする方向に情熱を燃やす人もいるだろう。自然がはらむ多様な諸側面から、「それぞれの宇宙」があぶり出されようとしているのだ(Part1)。

これらのテーマについて、今はまだ個別に研究されているが、いずれ結びつけられて「宇宙」の全容として提示されるようになるだろう。科学は個別性を徹底する中で普遍的な真実に至ろうとする営みであり、私たちの認識はまだ部分にとどまっている。いずれ、全体に及ぶであろうと信じている。だからこそ、自然の個々の部分の振る舞いを徹底して突き詰めることが、現在において肝要な作業になるのである。

本特集では、大は全体宇宙の1028mから小は素粒子の10-18mまで、最前線で続けられている「それぞれの宇宙」研究の現状を報告する(Part2)とともに、今後いかなる展開が期待できるかをまとめている。いずれの分野においても、総研大とその基盤研究機関が果たしている役割は大きい。認識の「宇宙」の拡大、そして統一的な描像を作り上げることこそが総研大に課せられた一大任務なのである。

池内 了
総合研究大学院大学教授葉山高等研究センター

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