日本財団が行っている「18歳意識調査」というものがある。18歳の若者を対象に、昨今のいろいろな社会課題に関する意見を調査している。2019年には、「国や社会に対する意識」に関して、日本を含む9カ国で調査が行われた。インド、インドネシア、ベトナム、中国、韓国、英国、米国、ドイツと日本で、17歳から19歳の各国1000人ずつを対象とした。
19年といえば、今から2年前。新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)で世界中が非常事態になる前のことだ。もしかすると、若者たちの意識もそれに応じて変化したかもしれないが、19年時点での世界の若者たちの意識を見てみよう。この結果に私はがくぜんとし、日本の将来を真剣に憂える思いを抱いた。
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調査項目の第1は、「自分を大人だと思うか」である。日本で「そう思う」若者は、全体の29.1%だった。つまり3分の1だ。中国が一番高くて89.9%。各国ともだいたいが80%台。韓国の49.1%とベトナムの65.3%が特に低いのだが、日本はそれらと比べても特別に低い。
2番目の質問は、「自分は責任がある社会の一員だと思うか」である。日本で「そう思う」と答えたのは44.8%だった。半分に満たない。中国が一番高くて96.5%で、各国ともだいたい80%から90%である。それらに比べれば低いのが韓国で、74.6%なのだが、日本はそれにもほど遠い。
3番目の質問は、「将来の夢を持っているか」である。日本で「持っている」と答えたのは60.1%。4割は夢がない。この質問はインドネシアが一番高くて97%、中国96%で、ほとんど90%以上である。若者は、みんな夢を持っているのが当たり前なのではないか?
いつも数値が低い韓国でさえ82.2%である。
4番目は、「自分で国や社会を変えられると思うか」という質問である。日本で「そう思う」と答えた若者は、たったの18.3%しかいない。ほとんどあきらめの状態だ。一番高いのはインドの83.4%。ほかはだいたいにおいて、四捨五入して50%から70%である。ここでも低いのは韓国の39.6%であるが、それと比べても日本は特に低い。
5番目は、「自分の国に解決したい社会課題があるか」だ。日本で「ある」と答えた若者の割合は46.4 %。半分弱である。世界ではほとんどが70%台。韓国でも71.6%である。問題意識を持つという点でも、日本はひどく低い。
6番目は、「社会の課題について家族や友人と積極的に議論しているか」である。日本で「そうだ」と回答した若者は27.2%。3分の1に満たない。一番高いのは中国の87.7%で、だいたいの国では70%台である。いつも低いのは韓国だが、それでも55%。日本の若者が、いかに何も議論していないかがわかる。
最後に、「自分の国は将来良くなると思うか」という質問である。日本では、「良くなると思う」と答えた割合は、たったの9.6%だった。逆に「悪くなると思う」が37.9%、わからないが32%である。「良くなる」と答えた割合は、中国が96.2%、インドが76. 5%、インドネシアが56.4%、ベトナムが69.6% と、途上国は概して高い。
これに対して、先進国では、米国が30.2%、英国が25.3%、ドイツが21. 1%である。韓国も22%だ。先進国は、どこでも閉塞感に見舞われているのだろう。現在の途上国は、確かに以前よりも今の方が良くなっているという実感が持てる。その延長で、将来も良くなるという自信が出てくるのだろうが、先進国では、概してそうはいかない。それにしても、日本の若者で将来が良くなると思う割合がたった9.6%なのは低過ぎないか。
逆に「悪くなる」と思う若者が3分の1ほどいるのは先進国である。それも、日本は37.9%なので、それらを上回る。「わからない」という回答が多いのも先進国だ。これも、現状の閉塞感を表しているに違いない。中国など、「わからない」と答える若者はたった2.6%しかいないのだ。
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今の若者たちは、自分が社会を変える気概に乏しく、問題をみんなで議論することもなく、将来に夢も希望も持っていない。こんな状態を作り出したのは誰か?それは今の大人たちである。
(2021年6月6日)